- 2020.05.02
「症例別トラブル」から学ぶ「初心者でもわかる歯列矯正選び」
このページは2022年10月18日に更新されました。(歯科医療を科学し結果にこだわる番町D.C運営ポリシーはこちら)
「何年もかかったのけど思った通りの結果ではなかった」、「結果に納得できずもう一度矯正することになった」こんな話を聞くことがあります。
誰だって「歯列矯正で失敗した」なんて後悔はしたくありません。しかし、「歯列矯正が初めてなので何もわからない」、「そもそも何から調べたらよいかわからない」そう言った人の方が多いでしょう。そこで「トラブル例から学ぶ初心者のための矯正選び」と題した記事を書かせていただきます。
この記事を読むことで「自分に合った歯列矯正選びと起こりやすいトラブル」について知ることができます。
また「どんなトラブルがある?」「どうしてそれが起こる?」、「治療費や治療期間は?」、「身体に対する影響は?」といった疑問が解けます。また「歯列矯正の基本が分かり、矯正医選びが楽になる」ようにわかり易く解説しています。
番町D.C.では、20年以上歯列矯正の治療に携わり数多くの「矯正のトラブル例」をリカバリーしてまいりました。
矯正初心者でも絶対に失敗しないための知識をつけ、健康な歯並びと身体になってください。
①.「出っ歯」の矯正トラブル例
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①.「出っ歯」の矯正失敗例
実は日本人は出っ歯で悩んでいる人は多いです。これを上顎前突といいます。
上顎前突では、下顎の位置を前に出した位置に噛み合わせを変える必要があります。
しかし、上顎前突の人は顎の緊張が強い傾向があり、顎がなかなか前に出てきません。通常は「ワイヤーや装置を使って上の歯を後ろに送ったり」、「下の顎を前に出させる装置」を装着されます。審美性の回復を理由に抜歯矯正を薦められる場合もあります。
実はこの様なかみ合わせになる理由は乳歯列のときに既に顎が後ろに下がった状態でかみ合わせができてしまい、そのまま永久歯が生えてかみ合わせが完成してしまったことにあります。
私も「上の歯すべてを後ろに送ったり」、「下顎を前に出させる装置」を使って治療をしたことがありましたが、あまり効果的ではありませんでした。
出っ歯の人は筋肉の緊張が強く、装置を使っても下顎は後ろに戻りやすく、上の歯を後ろに送ろうとしても嚙み締めが強いと歯を沈めるか、前側に押し倒す力がかかって、なかなか後ろに移動してくれないからです。
「抜歯矯正では、上の前歯が後ろにさがり」口元は治ります。しかし、歯が後ろに下がった事で口の中のスペースが狭くなり「舌が喉の奥に入り込み」、気道を圧迫されて呼吸がしづらくなるリスクが高いのです。
出っ歯の人はもともと噛み合わせが低く呼吸がしにくいのに、倒れた前歯が邪魔になって、気道が塞がり、鼻呼吸までしにくくなってしまうケースもあるのです。(上、正常な噛み合わせの人。下、顎が後ろに入ると呼吸路が狭くなる様子を示した図)
正常な噛み合わせと呼吸路
顎が後ろに入り呼吸路が狭くなっている状態
呼吸に問題が出るのは出っ歯の抜歯矯正をおこなったあとに比較的高い頻度で起こりうるトラブルです。
歯を抜かれてしまうとリカバリーにも限界があり、舌の収まるスペースを完元に戻すことが難しくなります。
これは「睡眠時無呼吸症候群」の原因にもなるのでとても深刻な問題なのです。抜歯矯正をすぐ決断することは避けるべきです。
また出っ歯で抜歯矯正を行っても上の前突感といった不自然さが改善しない場合があります。
その原因はの一つとして下顎が前に出ていない状態で噛み合わせが仕上がったことがあります。
「下顎に対して上顎が出ている状態は改善されないため頬の張りが残った顔つき」になることもあります。
出っ歯の矯正を失敗しないためには、きちんと「咬合学」(咬合学について詳しくはこちら)に基づいた矯正診断ができる歯科医院を探す必要があります。見た目だけを改善だけを求めて治療を受けることは矯正治療の本質ではないのでそこを理解しておく必要があります。(咬合学に基づいた番町D.C.「出っ歯」の治療の詳しい説明はこちら)
②.矯正治療トラブル例(受け口)
実は受け口の矯正治療は難易度が高く、トラブルが起きたときの症状は重いためとても厄介です。
受け口は歯並びは治ったけど体調不良が悪くなる患者さんが特に多い治療だからです。
実際に番町D.C.では治療後に辛い症状(頭痛、倦怠感、顎の痛み、首の痛み、激しい肩こりなど)に悩まされ、再治療で来院され方が最も多いのがこの受け口で治療を受けた患者さんです。
受け口が体調不良の原因となる理由は、受け口の治療の仕方に特徴があるからです。
受け口は下顎が上の歯より前に出ているので下の歯を後ろに動かさなければ治りません。この移動はとても難しく一般的な治療の仕方としては「下の歯だけ2本抜歯し前歯を後ろに倒す治療か」、「下の奥歯を圧下(沈める)ことで、下顎を回転させて正常な噛み合わせを作る」方法の2つが使われます。
しかし「抜歯して前歯を内側に倒す方法は口の中を狭くしてしまうリスク」があり、「下の奥歯を圧下する方法は噛み合わせを低くくなり、顎周囲の筋肉の緊張が高まり、顎関節症(不定愁訴)を発症してしまうリスク」があるのです。(噛み合わせで不定愁訴が起こるメカニズムと症状についてはこちら)。
理想的には奥歯の高さを高くするなどのコントロールをしながら、下顎を回転させるという方法を理解して歯列矯正を行うべきです。
下顎をコントロールする矯正法についてはこちら
体の変化についてはこちら
③.叢生(ガタガタ)のは並びのトラブル例
叢生治療では、抜歯矯正が行われうことが多い傾向にあります。叢生(ガタガタ)の歯並びの患者さんは顎の骨も狭くなっている上、かみ合わせも低い傾向があり、そのままで抜歯矯正を行ってしまうと、歯列が狭くなって口の中も狭くなってしまいます。
①の矯正のトラブル例と同じ様に「呼吸の問題が起こるリスク」があります。叢生の場合、歯にはできるだけ弱い力をかけながら「ゆっくり骨ごと歯列を広げる矯正治療」が勧められますしデーモンブラケットのような「セルフライゲーションブラケット」を使った矯正治療が最もおすすめです。
ただし、大人の場合は、見た目の美しさや、審美性を強く求めることはかなり難しくなります。その場合は、体質や顎の大きさ、かみ合わせなどを総合的に判断して審美性と身体の状態とをどちらを優先するかで治療法を決めることになります。
④.開口(前歯が閉じない)の矯正トラブル例
「治療が想像以上に難しい」のが開口(前歯が開いている)状態の治療です。
「最後まで前歯が閉じなかったり」、「後戻り(矯正前の状態の開口の状態に戻ってしまう)して再び開口になったりする」リスクが高い不正咬合です。
開口は奥歯が低くいことで下顎が奥に入ってしまい、顎の筋肉が緊張してハイアングル(下顎の傾斜が後ろに向かって強く上がっている状態)が多く。その場合はただ前歯を引っ張っただけでは開口は治らないケースがあります。
通常開口は奥歯を圧下させたり、抜歯をして上下の歯を後ろに引いたり、上下の前歯を引っ張ることで前歯を閉じる治療を行います。
開口の患者さんは奥歯が逆に低いことが多いので、奥歯を高くしながら、下顎を前に移動させ奥歯の顎の筋肉を緩めることで顎を回転させて開口を治療するという治療法の方が後戻りも少なくなり顎の緊張が取れやすくなります。
⑤.左右的にズレた噛み合わせの矯正失敗例
左右的にズレた噛み合わせ(正中がズレている)も実は片方の奥歯だけが低いという特殊な状況で起きています。その場合抜歯矯正や、顎切りの手術と併用した治療を勧められることがほとんどでしょう。
しかし手術はあまりお勧めできません。このような噛み合わせは、低い側の奥歯だけを高く引き上げるなどの矯正を行うことで手術をすることなく治療が可能なケースが多いからです。
手術と矯正治療を併用して噛み合わせは治ったが、「顔つきがおかしくなったり」、「体調がおかしくなってしまった」という悲惨なトラブルもないわけではありません。
手術を受ける際は本当に必要かどうかをセカンドオピニオンを最低数か所相談してから決めることをお勧めします。
実は②.の受け口や、④.の開口の患者さんでも手術を勧められることがありますが、私の経験では正しい咬合学の理論で治療をすれば手術を必要な症例はとても少ないと言えます。
⑥.治療期間について
治療期間は歯の状態、体質などでまちまちなので、「長いから下手」とか、「早かったから上手い」とは一概には言えません。ゴムかけなどの患者さんの協力度、普段のストレス管理、体質的によっても治療期間は変動します。通常「1年~2年半程度の期間」が一般的ですが、難しい症例はそれより長引くこともあります。
矯正治療は歯の動きが予想通りいかないこともあるので、治るまできちんとかかるという覚悟が必要です。
⑦.治療料金について
通常ブラケット矯正では70万円~120万円程度ですが、使用するブラケットや治療にかかる期間、技術内容によって変動します。
安いから下手とか、高いからうまいというわけでもありません。先生によって診療している患者さんの難易度レベルは異なるため、平均的に難しい患者さんがいらしている場合は料金も高め、簡単な患者さんが多い場合は安めになると思います。
自分がどの範疇に入るかを考えたうえで、その料金が適切かどうかを判断する必要があるでしょう。
まとめ
❶.出っ歯は抜歯矯正は勧められません。奥歯を高くしながら下顎を前に出す矯正が理想的
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