- 2019.11.20
矯正治療の歴史を知って、これからを考える。
このページは2021年9月2日に更新されました。(歯科医療を科学し結果にこだわる番町D.C運営ポリシーはこちら)
近年、「マウスピース矯正」といった治療とは言えない矯正治療が多く宣伝され、ものすごい勢いて広がってきています。
私は「こんな治療法広まってしまって、本当に大丈夫?」ととても危惧しています。
さらに、歯科医師が全く入らないでも歯列矯正が行える「企業が直接患者さんと取引できるマウスピース矯正」が安さを売りにたくさんの患者さんを集めている状況は呆れるほかありません。
この手の治療は無知な患者さんを食い物にして、本当に恐ろしい治療だと私は考えています。
なぜなら、歯列矯正は歴史を見ればとても難しく、医療について理解と経験の医師とは比べ物にならない上、利益追求を目的とする企業体が本来手を出すべきものではないことが明らかだからです。
①.バンドを使った矯正治療(矯正治療のはじまり)
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①.バンドを使った矯正治療(矯正治療のはじまり)
矯正治療は、最初、歯並びの悪い人が、実際に自分の歯を動かした方向に押しつけ続けたらどうなるかをやってみたところ、毎日やっていると、実際に歯が動いたことから始まったようです。
そののち、もっと効率的に歯を動かすために、直接ブラケットを歯につけ、ワイヤーで矯正を行う方法が開発されました。
初めのころは歯にブラケットを直接接着する接着剤がなかったため、歯にバンドをセメントでつけ、そのバンドにブラケットをろう着してから、ブラケットにワイヤーをとおして歯を矯正していました。
プリアジャステッドブラケットシステムストレートワイヤーテクニック(石川晴夫、古賀正忠 書)より引用
②.ダイレクトボンディング法(スタンダードエッジワイズ)
やがてダイレクトボンディングと呼ばれる、歯に直接ブラケットを接着させる方法で矯正治療が行われるようになりました。
これらのワイヤーを使った初期の矯正治療のテクニックにはエッジワイズ法やベッグ法などがあり、最もスタンダードな矯正の方法として長い間行われてきました。
このテクニックに使用されるブラケットは個々の歯に対して、まったくプログラムがなされていないもので、ブラケットをつける面に対して垂直にワイヤーの入るスロットが形成されていました。従って、一本一本の歯に合わせてワイヤーをまげて個々の歯を動かす必要があり、治療結果に一定のきまりがなく、患者さまごと、先生ごとに治療結果が異なってしまうという欠点がありました。また患者さんの歯の状態に合わせて頻繁にワイヤーを曲げていかなければならないために、非常に効率も悪い方法でした。
プリアジャステッドブラケットシステムストレートワイヤーテクニック(石川晴夫、古賀正忠
書)より引用
③.ストレートワイヤー法(プレアジャステッドテクニック)
それに対して、アンドリューズらが開発したストレートワイヤーテクニック(現在の矯正治療はほとんどこの方法になっている)ではブラケットにトルク、インアンドアウト、アンギュレーション、(その他全部で6つあるかみ合わせを理想的にする鍵)、を前もってとりいれられたブラケットを使用します。これによって矯正治療を行う先生による治療結果のばらつきが、以前の方法と比べ、格段に少なくなりました。

④.超弾性ワイヤーの出現
さらに近年は、超弾性といって、どんなに曲げられても元の形に戻る性質をもったワイヤーや、温度反応性形状記憶合金といって、患者さまのお口の中の温度に反応してワイヤーにかかる力が変化する特殊なワイヤーが開発されてきました(オームコ社のカッパーナイタイワイヤー)。
⑤.セルフライゲーションブラケットの出現
また、今まではメインのワイヤーをブラケットに細めのワイヤーで縛り付ける方法で矯正治療を行っていました。しかし、徐々にセルフライゲーションというブラケットにワイヤーを縛りつけないタイプのブラケットが開発されてきました(スピードブラケットやタイムなど)。これらのブラケットは当初、リガチャーワイヤーでブラケットを結紮しないため、治療時間を少なくすることができるというのが売りでした。
しかし、それ以外にも、歯列を無理なく拡大できるなどのメリットがあることが徐々にわかってきました。
いずれのセルフライゲーションブラケットも画期的なものでしたが、デーモンブラケットはこれらの中でも最高傑作といえます。デーモンブラケットは、セルフライゲーションブラケットの中でも特に、ブラケットとワイヤーとの間に摩擦が少ないことが知られています。
そのため歯の動きが制約されず、今までは抜歯するしかないと思われていた症例でも、抜歯しないで治療を行うことができるようになったのです。
デーモンブラケットは、ほとんどの部分が金属でできているので、審美性は期待できませんが、矯正治療中は審美性よりも治療の結果が求められるので、デーモンブラケットが最もお勧めです。
⑥.より弱い力による矯正治療
今は、矯正治療中にあまりにも過大な力を加えると、根の周りの骨を吸収してしまったり、組織に良い影響を及ぼさないことが分かってきており、できるだけ弱い力で、効率的に歯を動かすことがベストであるという考えが現在の矯正治療の潮流です。短期間の強い矯正力のかかる治療はあまり好ましくないと考えられています。
また矯正の初期に使用されるワイヤーも0.012~0.013インチ(約0.3ミリ)と細いものが選ばれるようにになり、セルフライゲーションブラケットと組み合わされると矯正中の痛みは格段に少なくなってきています。(代わりに固いものが食べれるため、ブラケットが取れてしまうという良い意味のトラブルが出てきてしまうくらいです)
このような治療により、矯正治療後のトラブルが非常に少なくなってきています。
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⑦.インダイレクト法による正確で確実な矯正治療
矯正治療をさらに確実に、そして正確に行う方法がDr.白須賀によって開発された、白須賀法インダイレクトボンディング法です。当医院ではすべての症例で白須賀法を採用しています。
今までブラケットの装着は、ダイレクトボンディング法といって、測定することなくブラケット直接歯に装着していました。
しかし、白須賀ポジショニングゲージの発明により、ブラケットの位置づけを0.25mm単位で正確に行うことができるようになったのです。
これによって矯正治療の精度は格段に向上しました。
私も月に何症例か、白須賀法を用いたブラケットポジションの技工を行っております。技工にかかる時間がかなり必要ですが、これを行うことによって患者さまの負担と治療期間の短縮され、治療精度が大幅に向上しました。
なぜインダイレクトなのか?・・・ブラケットを付ける位置は矯正治療の成否を決まるほど重要なポイントです。
ブラケットの位置決めが矯正治療の成否の半分以上を決めるといっても過言ではないでしょう。この位置決めをどれだけ正確に行なうかが、矯正治療の質を決めるといっても過言ではないでしょう。
噛み合わせの面を凹凸なく作るためには全ての歯のブラケットの位置が正確でなければなりません。たった一本の歯の高さが狂うだけで、噛みあわなくなるからです。しかもたった250μmの狂いも許されないことがわかってきたのです。
⑧.矯正治療は新たなステージへ
白須賀法で矯正治療を行ううちに、どんなに正確にブラケットを位置付しても仕上がらない患者さまがいることに気づきました。
この原因は、人間にはそれぞれかみ癖があり、その癖によって、顎の3次元的位置関係がずれてしまっていることにあるのです。
どんなに歯列を完璧に上下完成させても、顎の3次元的な顎の位置のずれていると、体調が悪くなってしまうことにも私は気づいたのです。
現在当院では、左右のどちらかをより挺出させることによって左右のバランスの狂いを治したり、左右どちらの奥歯も挺出させることによってハイアングル(顎が後ろに向かってせりあがったかみ合わせ・・睡眠時無呼吸症候群などを起こしやすい)などの矯正治療の難易度の高い症例の治療をおこなっております。
この方法は今までの矯正治療の方法と考え方が異なっており、顎の三次元的な位置を整えることにより、体のバランスがよくなったり、首や肩のコリが全くなくなってしまうなどの場合によっては全身的な問題すら矯正治療が解決するという画期的な治療技術なのです。
バランスを考慮した矯正治療を行うことで体調まで改善させるということも、今後は夢ではなくなるのです。
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