歯を治すことと、かみ合わせを治すこと

  歯を治すことと、かみ合わせを治すこと

お役立ちコラムCOLUMN

2014.08.31

歯を治すことと、かみ合わせを治すこと

一般の患者さんは、虫歯を詰めて歯を治したり、根の治療をしてかぶせものをしたりすることが歯の治療だと思う方がほとんどだと思います。

しかし、本来は虫歯の治療をする際に、かみ合わせをどのようにするべきかというビジョンを持っていなければ、絶対に成功しません。

虫歯の治療を始める前に半調節性咬合器(上顎と下顎の位置関係、運動を正確に再現することが可能な咬合器)に患者さんの模型を付け、かみ合わせの状態を診断する必要があるのです。それをもとに、かみ合わせの高さや、治療の方法を考える必要があり、それらすべての治療は矯正治療などとも関係しているため、総合的な歯科医の知識と感覚そして経験が必要になります。

治療計画の説明というと、日本ではほとんどの歯科医が、ここはインプラント、ここはブリッジ、ここは白い材料で、ここは保険の金属冠、といった具合に、どんな材料で無くなった歯を補うのか、何を詰めるか、程度の計画しか立てません。また歯型をみて噛み合わせが上下かみ合っていさえすればそれで噛み合わせは大丈夫と思い込んでおり、患者さんの今のかみ合わせ自体が狂っていることなど微塵も考えてもいません。

しかし、それが日本の歯科教育を受けた歯科医の標準的レベルの治療計画です。日本ではかみ合わせの理論を教える仕組みも、教えられる先生もいないのです。一方、アメリカでは咬合学(かみ合わせに対する理論)は徹底的に教育されます。つまり咬合をわかっていない歯科医は歯科医とは言えないというのが、彼らの歯科医に対する評価です。しかし、日本の歯科医は、半調節性咬合器は噛み合わせの診断をする咬合器でなのですが、その使い方すら知らない先生がほとんどなのです。

しかし当医院では、そのような治療計画は治療計画とは言えないと考えています。
私たち歯科医はプロです。プロは患者さんがわからなレベルの情報を提供できなければプロと言えません。噛み合わせは歯科治療の中で最も重要なエッセンスです。そこを抜きにした治療計画などあり得ないと考えます。

私たちは、まず、型を取った後、かみ合わせを取ります。それはただ単に噛んでくださいと言って上の歯と下の歯を噛み合わせた位置ではなく、頸椎や、顎の周囲の筋肉が正常になるように噛んでもらったかみ合わせの位置です。ですから、場合によっては奥歯を高くする器具を左右高さを変えて、入れながらかみ合わせを取ったり、顎の位置を正しい位置にずらしてもらってかみ合わせを取ったりします。

そして、その位置が今、噛んでいるかみ合わせの位置とどれだけずれているか、そして、それを治すためにはどのような治療法が最も適切であるのかを提案できなければなりません。

ほとんどの患者さんで、正しいかみ合わせの位置は、左右で奥歯の高さが違っていたり、顎の位置が前後的にずれていたりしています。ですから、3次元的に適切なかみ合わせでかめている患者さんは皆無に等しいのです。それずれを矯正で治療し、適切な3次元的な位置関係にしてあげると、非常に本人も驚くほどの高い効果が得られるのです。

これは単に歯を白くするとか、無くなった歯を入れるといったレベルの治療とは全く違います。健康全体にかかわってくる効果なのです。

これを知れば、かみ合わせを治さない治療がいかに治療の段階でもごく基本の基本レベルであることがわかってくるのです。

残念ながら日本の保険制度下では、この基本の基本すらできていない歯科医院の方が多く、かといって審美をうたい文句にしている歯科医はさらに治療の基本すら理解しないで経営に走っている(臼歯部の審美治療はほぼ確実にかみ合わせの崩壊を招きます)という壊滅的状況であり、非常に嘆かわしい状態です。

私は、日本で本当の歯科治療の技術が広がり、少なくともきちんとした歯と体の健康を取り戻したいと考える患者さんが、きちんとした治療を受けることができる環境になってほしいと切に願っております。

そのためには、患者さん自身もデンタルIQを上げ、本当の歯科治療を行っている歯科医院以外が淘汰される社会にしなければならないし、われわれ歯科医も正しい技術を験算し、本当の意味で患者さんを治せる先生が増えなければならないと考えているのです。(日本で本当の意味で歯を治せる先生は数えるほどしかいらっしゃいません。これは残念ながら事実なのです)

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