治療に必要な感性と、受験に必要な知力

  治療に必要な感性と、受験に必要な知力

お役立ちコラムCOLUMN

2014.07.26

治療に必要な感性と、受験に必要な知力

歯科医として20年以上治療をしてゆくうち、歯科医としての資質はどのようなものか?
年齢を重ねるうち、その奥行がだんだんとわかってきました。

30代ぐらいまでは、歯科医としては単に器用で技術があればよい、知識があればよい、と思っていました。

しかし、医者もそうですが、歯医者も、
「患者がなぜその疾患を患っているのか?」そして、
「その原因が一体なんであるのか?」
ということをわかることが治療を成功させるのに必要であるとわかっててきました。

患者さんは、パッと見ただけではわからないさまざまな問題を抱えています。
たとえば、配偶者のストレス、会社のストレス、介護のストレス。
私が診てきてた大人のストレスの原因で多かったものはこの3つです。

そしてそのストレスを取り除かなければ歯の治療自体がうまくいったとしても、本当の意味での治療は絶対にうまく行ったとは言えません。

「技術的に歯の治療がうまくいけば大丈夫だ!」もちろん、最初はそう思っていましたし、
「きちんとした治療技術を身に着けることが歯科医としての使命である。」

と思っていました。もちろん、疾患に対する知識、治療手順、虫歯や疾患の状態に対して適切に対処できる引き出しの多さ、かみ合わせと全身の関係に対する知識と、知力は歯医者にとって非常に重要な資質ですし、これを身に着けることですら非常に困難です。

しかし、それでもそれは、まだ歯科医師としては道半ばに過ぎないと最近思うのです。

なぜ、歯がそのような状況になってしまったのか?家族環境、家族との関係は?そしてその患者さん自身の性格や体質、感受性?を理解していなければ、治療が終了した後でも、原因が取り除けたとはいえず、また問題が再発するのです。

そのように考えると、今日よく出会う、患者さんの体を触ることはおろか、目も合わせず、パソコンの画面と検査データだけ見て、診断する知力だけの医師は明らかに失格医師と言えるでしょう。

歯科医でも、患者さんと話もせず、ただ歯の治療だけしていても、その一本の歯を治すことができてもその人の歯の疾患を完全に治せたとは言えないと思います。

そうなると話を聞いたり、雰囲気、体を触った感覚で、その人自身を理解できるだけの感性が必要になります。

そう考えると、歯科医師も医師も、相当な知力と感性が必要とされる職業であると考える思うのです。つまり受験勉強ができるだけでは、医師の適正があるとは言えない難しさがあり、それが今の知力に頼り過ぎた医療業界の問題の根っこがあるとは思うのです。

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