本当の歯科治療を見たとき

  本当の歯科治療を見たとき

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2018.08.15

本当の歯科治療を見たとき

このページは2022年11月14日に更新されました。

私が、歯科医として大学院で3年ほど研究をしていたとき、たまたま、アメリカから臨床技術を習得した先生に出会う機会がありました。
当時、私は大学院で基礎の研究をしていたため、マウスから骨芽細胞を培養する実験にいそしんでいました。
毎日研究づけで、臨床経験が積めるのは一般開業医で週2回アルバイト勤務していた歯科医院での治療でしたが、実際には治療技術を教えてもらえる時間などなく、朝から晩まで患者さんをこなすのが精一杯の毎日でした。

そして、アルバイトをするうちに、実際の歯科医院では大学で習ったような診療をすることが出来ないのではないかと理解するようになりました。
一日で20人から30人のたくさんの数の患者さんを診療をするストレスは大変なもので、休む間のなく自分の体を酷使し、体中に発疹ができたり、首の周りにアレルギーが出来たり、診療の翌日には、朝起き上がれないほどへとへとに疲れきっているいました。そのときは自分の丈夫でない体を嘆きました。
自分が一生をかけてしようと思っていた仕事がこんな苦しいとは思いもしなかったし、診療をすればするほど身体がボロボロになってゆくのがとてもつらく、もう保険診療で生計を立ててゆくのは無理な身体だとはっきりわかるようになりました。
そんな時にアメリカの技術を教えてくださる先生に出会えたのは本当にラッキーでした。初めてその治療を見学したときのショックは鮮烈なものでした。
虫歯を取り除くときの取り組み方が、保険診療に慣れている日本の先生で見てきたものとは全く異なるのです。当然時間もかかるし、一日に診療できる人数も限られます。
まさしく全身全霊で歯科治療を行うのですから、患者さんの調子がよくなるのは当たり前といえます。
また、アマルガムを詰めて修復治療(虫歯などの詰め物をする治療)は終了するのですが、歯を元の形にに戻すテクニックは非常に素晴らしいものでした。

その日のうちに虫歯を完全に取り除き、二度と虫歯にならない状態にしたのち、治療後すぐに正常に機能するように治療を完了するという技術は日本の先生でほとんど見たことがありませんでした。

その頃大学院生であった私は、あちこちの先生が治療をするのを見てはいましたが、どうも「治療自体がぴんと来ない」というか「治っているように見えない」といった違和感があったのです。

その感覚は全く正しかったと認識したのです。日本のように中途半端な治療技術に目が慣れ、きっちり治すものがいったいどんなものなのか、考えることすらしなくなっているのが日本の歯科医療の現状だと思います。

そういった意味でも、本当の正しい歯科治療を一人でも多くの先生に伝えたいと思っています。
今はアメリカでも日本でも審美的な要求からレジンが多用されるようになってきていますが、レジンは所詮樹脂です。水を吸収する性質があり、長期間口腔内に入っていると、吸水し、削るとなんともいえない臭いがしてきます。また歯の組織に深く浸透させて接着性を出すため、除去が必要なとき、どこまでがレジンで、どこからが歯なのか見分けがつかないため、歯を余分に削ってしまうという欠点があります。

歯に充填した材料は必ず劣化してきす。そして、劣化した場合は交換が必要になりますが、そのとき必要のない歯を削ってしまう可能性がある材料はあまり好ましくありません。

毎日何十キロもの圧力に耐え、水分や酸、アルカリに耐えうる材料かといわれれば、ハッキリ言ってはレジンは不向きといえるのです。これは中学生ぐらいの教育を受けていれば容易に理解できることですが、大人の場合、さまざまな情報に惑わされ、正常な判断が出来なくなっているといえます。
情報は取捨選択が必要です。今のインターネットは、誤った情報や、利益のために誘導された情報が多すぎて、真実の答えを見出すことがかなり難しくなっているといえます。
レジン修復がこれだけ浸透した理由の裏にあるのは効率化と、省力化、そして徹底したコストカットであり、技術を必要としないお手軽な治療へと歯科医療が進んでいるのが現実だと私は思っています。

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