虫歯の原因と治療

  虫歯の原因と治療

お役立ちコラムCOLUMN

2009.12.18

虫歯の原因と治療

虫歯の原因は、お口の中の細菌によって産生される酸です。ですから基本的にお口の中を清潔に保ち、細菌数を減らしておけばできにくくなります。

しかし私の経験では、治療を受けていながら、虫歯の除去が不十分で虫歯の再発を起こしていることが比較的頻繁にみられます。

これらは齲蝕検知液を必ず使うことやラバーダムを使うことで防ぐことができます。しかし虫歯をきちんと取り除くことができるかどうかも歯科医師としての大切な素質といえ、その素質や、努力が足りない先生がどうしてもいらっしゃることが、日本の歯科医療の問題でもあると思います。これは日本に歯科大学の教育システムと歯科医師の国家試験の仕組みがアメリカなどと比較して十分でないことも原因の一つといえます。

また、日本の保険制度という、現状の歯科医療にそぐわない支払い制度があることが最大の問題でで、きちんとした治療を行うためには自由診療でなければ難しいということを患者さんの理解がまだ十分に浸透しておらず、正しい治療を正当な対価で行える環境が十分に整備できていないため、これからも虫歯が正しく治療されるようになるまでには時間がかかりそうです。

国が与える歯科医師免許も、現在の筆記だけの国家試験では知識があっても、治療を行える素質があるかどうかは調べようがありません。歯科医になるための試験も、少しずつ、治療の実習や患者さんに対する精神面、倫理面を審査が取り入れられるようになってきましたことは朗報です。

また、虫歯の取り残し以外でも、歯に不適切な力がかかることでひびが入ったり、割れたりすることで、そこから細菌が入りやすくなり、虫歯になってしまうことがあります。

こうならないように、毎晩ナイトガード(顎関節症の治療参照)することも大切ですし、かみしめの原因となっているかみ合わせを治すことも、そして普段の生活でののストレスや不摂生などをしないといったことも、予防という意味で虫歯の治療の一つといえます。
また詰め物が取れていることに気づかないで長い間放置していたりすると、痛みが無くても虫歯になっています。虫歯は必ず痛くなるとは限りません。痛くなったときはすでに手遅れと思ったほうが良いです。違和感があるぐらいでも歯医者さんに見てもらうことをお勧めいたします。

様々な虫歯の例
虫歯の取り残しによる虫歯

痛みが全くなかった歯ですが、詰め物を外してみるとひどい虫歯になっていました。このような虫歯はレントゲンでもわかりにくく、レントゲンの写り方で経験から虫歯があると判断しなければならない場合もあります。虫歯が多くある方の場合、痛みの感覚は麻痺していきます。
(左:詰め物の状態、右詰めもの除去後)

外れてしまったことに気がつかないで虫歯が大きくなってしまった例

詰め物が取れてしまっているのに気がつかないと、徐々に虫歯が広がり、痛くもないのに中で虫歯になってしまいます。強い咬みしめや、歯軋りで詰め物が取れてしまうことがしばしばありますが、歯の状態を気にしないでいると外れたままどんどん細菌が侵入して虫歯がひどくなってしまいます。

また、歯は非常に過酷な条件下で酷使されています。材料にはものによって耐久性の限界があります。
レジンは吸水性(水分を吸ってしまう性質)があり、抗菌性はグラスアイオノマー、アマルガムなどの充填剤ほど期待できません。
また、最近ではだいぶ改善されてきましたが、ボンディングの作業時に神経に近い虫歯の場合、化学的な刺激で歯に痛みが出る患者さんもいらっしゃいます。
レジン自体の強度はだいぶ改善されてきましたが、口腔内の状況を見ると、レジンを多く使われているお口の中は、レジン自体が水分を吸収する性質があるため、「粘つき感」が強い傾向があり、当医院ではレジンの使用は推奨しておりません。
審美的な治療を要求される場所においても、グラスアイオノマーなどの吸水性の少ない材料を使用しております。
これは、前歯などの治療で、虫歯が深く神経に近い際、レジンでは覆罩(神経が出た場合の神経の保護作業)もしくは裏装(神経に近い虫歯に対する神経の保護作業)と言って神経の痛みを起こさないための材料を虫歯が最も深い部分に詰める必要があります。
しかし、現在のところ神経にもっとも痛みを起こしにくい材料はMTAしかなく、このMTAは時間の経過とともに黒く変色してしまいます。
この変色が歯の表面から透けて見えるため審美治療には向きません。
そのため、たとえ深い虫歯でもMTAを使わないで治療を行える必要があります。グラスアイオノマーは生体親和性が高く低刺激であるために、そのような治療に向いています。
ただし、レジンほどの強度がないのが難点です。
また、レジンは、一度虫歯になってしまうと虫歯が大きく拡大していることがあり、歯科の材料としてはまだまだ課題がありそうです。しかし、歯に充填することは比較的容易なので、多くの先生が審美治療と同時に気軽くできるため、日本やアメリカなどで多く使用されています。
しかし、虫歯の治療で最適な材料かと言われれば否定的な要素しかありません。

レジンは歯と着けるために接着剤を使用するため、充填する際にラバーダム防湿などを行わないで治療すると口腔内の水蒸気などが歯にかかるため、部分的に歯と接着している部分とそうでない部分ができてしまいます。

また重合収縮という性質から、固まるときに縮むことになります。この重合収縮によって、歯と接着している部分とそうでない部分(ギャップと呼ばれる)とができます。
このような性質により、接着力が強い部分のおかげで材料は取れにくいのですが、接着していない部分(ギャップ)も必ず少なからずあるのです。
もともとレジンに吸水性があるために、その接着していない部分に唾液や細菌などが侵入しますと、レジン自体の抗菌性が弱いために、そのギャップ部分から徐々に虫歯が進行してしまいます。
ために、を熟知して使用する必要があります。レジン充填にはラバーダム防湿を使用しないで行う治療はやめた方が良いと言えるでしょう。

レジンが詰められていた歯ですが、中が完全に虫歯になっていました(虫歯の取り残し)。レジンは吸水性があるため、金属と比べると、比較的虫歯が広がりやすい材料です。
虫歯を完全に取り除くと、きれいな歯が出てきました。虫歯の絶対に取り残してはいけませんが、削りすぎてもいけません。

すべての写真は顕微鏡を使って撮影したものです。顕微鏡はかなり細かいところまで確認できるのです。虫歯の治療時のポイントは、

虫歯を絶対にとり残さないこと。(齲蝕検知液もしくはカリエスチェッカーを必ず使用すること)
必ずラバーダム防湿下で治療を行うこと。
ルーペもしくは顕微鏡で削った形態、虫歯を確認すること。

の3つです。
残念ながら、材料の問題や取れたことに気がつかないで虫歯になっている人よりも、以前治療した歯の奥に虫歯があることのほうが多く、治療が終了しているからといって安心できるわけではありません。

この原因は虫歯を完全に取り除く治療を十分習得しているドクターが少ないことに起因します。
アメリカでは虫歯を取り除くことは当然の技術として教え込まれますが、日本の先生で本当に確実に虫歯を取りきれている先生はあまり多くないと言えます。

それを知らずに治療を受けるといわゆる歯医者のリピーターとなって、一生歯の治療に通わなければならなくなります。
これらの事実は私もアメリカで実際に行われている治療を見学してはじめて認識しました。それまでは私自身もラバーダムはしないし検知液も使用しておらず、完全に虫歯を取り除いているとは言い切れませんでした。
完全に虫歯を取り除くとこの写真の歯の状態のように、見た目にもある程度きれいになるはずです(着色してしまった部分は必ずしも虫歯ではない)。

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