治療における質管理

  治療における質管理

お役立ちコラムCOLUMN

2019.11.21

治療における質管理

このページは2022年11月14日に更新されました。

歯科医療の「質」の継続的改善

治療技術は日進月歩です。常に改善を怠ってはなりません。

継続的改善の段階から考える歯科医療(医療)
治療はステップのひとつひとつを確実に積み上げなければ治らない原因を特定することはできません。歯科治療が功奏しない原因として、以下のものが挙げられます。
1、正しい手順による治療がなされたか?
2、治療技術は十分であったか?
3、材料、薬剤の選択が適切であったか?
4、総合的な診断ができていたか?
5、患者さんの体質や健康管理上の問題がなかったか?
私たちはこれらの条件を徹底的に検討して効果が確実に出る方法で治療を行います。

1、正しい手順による治療がなされたか?
多くの歯科治療が適切な手順を踏まれていない。
①歯科治療ではラバーダム防湿は必須です。

歯の治療が外科治療にあり、治療に際し治療中の感染対策としてラバー防湿は必須です。ラバーダム防湿のない治療は、不潔な荒野で手術をするのと同じことです。

②材料は手順、使用期限を守って使用。
歯科材料はデリケート、扱い方を違えると外れたり、不適合や虫歯の原因になります。材料は取扱説明書に従って手順、操作時間を厳守しなければなりません。アメリカではタイマーを使った治療が当たり前の作業も日本では確実に行われることが少ないのです。

2、治療技術は十分であったか?
歯科だけにしかない技術的特殊性
①細かい手先の動きと力が必要です。

治療技術は、一朝一夕では身に付きません。毎分30万回転で回るタービンを指先の力だけで繊細にコントロールする、とてもデリケートな作業で、習得は難しいと言えます。

②口の中は狭く、器具のアクセスは制限されます。
人の口は入り口がとても狭く奥行きは深く、指先しか入りません。治療の際はデンタルミラーに映しながら作業が必要な部位が多く、鏡像で繊細に切削器具を動かす作業が日常茶飯事です。技術習得はとても難しいです。

③顎関節はとても不安定な関節です。
顎の関節は自由度が高く不安定*1です。人によっては噛み合わせが僅かにズレただけで体調が変化するほと重要な器官です。
噛み合わせを正しく把握するには、日々の努力と持って生まれたセンスが必要とされます。

*1 顎の関節は自由が高く不安定・・人間の体の中で唯一2つの関節で位置が決まる上、関節の可動範囲が広い関節です。しかも歯の高さによってその運動の終末位置が決まるので、関節だけでは動きが決まりません。

3、材料、薬剤の選択が適切か?
保険に使用する材料の場合、品質に問題があるものも少なくありません。また、改善の必要な欠陥がある場合もあります。
薬剤メーカーの場合、副作用を明らかにしない*2場合もあります。私自身が薬剤の成分を調べ、他の専門家の意見を聞くなどして、問題発覚に行きついたこともたくさんあったのです。

*2 副作用を明らかにしない・・副作用は患者さんごとに異なります。敏感な体質の方には特に注意が必要です。

4、総合的な診断ができていたか?
患者さんの虫歯や根の病気、そして埋伏歯の存在やかみ合わせ、そしてそれに伴う骨格のゆがみなど、すべての要素をきちんとバランスよく診断*3できる能力が歯科治療には必要です。
患者さんの日々の生活のストレスや仕事や人生の悩み、そして生き方までが歯と全身の健康状態に影響します。受け付けスタッフや歯科衛生士との会話が糸口になることも・・、スタッフとの連携は欠かせません。
薬剤メーカーの場合、副作用を明らかにしない*2場合もあります。私自身が薬剤の成分を調べ、他の専門家の意見を聞くなどして、問題発覚に行きついたこともたくさんあったのです。

*3 バランスよく診断・・矯正の専門医などは噛み合わせや歯の治療の知識に疎いことも多く、治療のバランスが欠けることがります(歯並びが治っても虫歯だらけや噛み合わせが合っていないなど)。

5、患者さんの体の変化や健康管理上の問題はないか?
治療後の経過で噛み合わせが合わなくなってきたりする場合がありました。「歯科治療の全身に対する効果*4でかみ合わせは治療後に変化してくる」ことがわかったのです。
このような場合は積極的に噛み合わせの変化に対応した治療が必要です。
頻繁にリテーナーが割れたり、ブラケットが取れたり、材料が外れたり、壊れたりする場合があります。

これは現代人特有の無理な仕事や寝不足や暴飲暴食に原因がありました。患者さんによっては自身にかかっている負荷に気が付かないこともあります。これらに気づいてもらうのも私たちの役目なのです。

*4 歯科治療の全身に対する効果・・噛み合わせは全身に影響するため、ゆがみのひどい方の場合噛み合わせの治療後に全身に変化が起こり、新しい体のバランスの状態では今までの噛み合わせの位置が合わなくなることがあります。

ISO9001取得で培った質管理術

2004年にISO9001を取得、2015年まで、10年(10回)に及ぶ第三者機関のサーベランス審査(年一回の更新システム評価審査)を経て「歯科医療の質管理」を徹底して参りました。

治療の質管理の仕組み
1,治療技術に関するもの

①主訴(患者さんが主に訴える内容)改善のチェックシさんステム。
②治療手順の管理マニュアル配備。
③厳格な基準で選ばれた材料。

2,作業環境に関するもの
①感染予防、衛生管理のマニュアル配備とそのチェック体制。
②材料薬品の在庫管理、医療機器の定期的動作テェック、器具の厳格な管理の体制。
③治療アシスタントマニュアル配備、スタッフ教育の徹底。
④厳格に選び抜かれた機器、器具。
⑤効率的動線設計と、徹底した空調管理

※医療の質・・・ISO9001はもともと製品管理についての規格でしたが、その適応範囲をサービス業にも広げてきました。そして医療行為のレベルを「品質」という言い方ではなく、「質」と呼びました。医療機関の「質の管理方法と技術」ISO9001システム(QMS=Quality Management Sysytem)の基準に従い審査することで医院としてのレベル評価の一助としてきました。しかし、医療行為の技術自体は個人技的に大きく依存するために、高い技術を施す上での作業環境を整える意味はありますが、技術そのものを保証するものではありません。当医院では2015年で一定の管理技術を習得できたと判断し、技術のレベルアップのための独自の基準を設け、2015年以降、ISO9001の継続審査を受けない方針としました。ISO9001を取得経験のある歯科医院は全国でも100件にも及びません。

マネジメント(質の管理)が技術向上の一助に!

当医院では2015年11月をもって、ISO規格による質マネジメントシステムを廃止し、独自の質マネジメントシステム(エチカマネジメントシステム)による歯科医院全体の質管理を行っております。
当医院における質マネジメントの構成は、以下のようになっております。

1、全体のシステム管理
医院全体として問題点はないか、スタッフ全員でレビュー(議論)し、問題点を提起し、解決案と解決計画を立て、実行することで、医院全体の継続的改善を行ってゆきます。
当医院で行われた例
①アポイントメントの改善

受付のアポイント時のミスや患者さんのキャンセル率を減少させ土曜日の混雑を解消する工夫など
②防犯カメラによる記録
トラブルを防ぎ、治療や患者さんの状態、業務作業状況の記録

2、医院経営としてのマネジメント
経理や、労務、法務や、情報発信としてのホームページ管理など歯科医院を経営と運営の管理の仕組み。
当医院で行われた例
①会計業務の透明性

自由診療の領収書明細発行など、専用ソフトによる会計システム
②法務担当者との連携
理事会による経営指針、問題患者さんに対する対応等
③労務管理
コンプライアンスにのっとった就労環境整備、スタッフの健康管理

3、治療(作業)環境の管理
治療材料の適切な在庫管理と品質管理、機械、機器の管理の必要性
当医院で行われた例
①徹底した在庫管理
当院独自の在庫プラグラムによる在庫管理と品質管理

②機器・機械管理
大型機械、機器の定期点検と予備機器の準備
③器具の滅菌管理
IMSシステムによる効率的な器具の洗浄滅菌
④空調温度管理
プラズマクラスターの空調管理とアロマ、お香による作業環境浄化

4、治療(固有)技術管理
治療技術とアシスタント技術の標準化と治療結果の検証システム
当医院で行われた例
①治療手順書

治療内容別の治療手順書、アシスタント手順書の完備
②教育訓練
アシスタントマニュアルとOJT(On The Job Training)による教育訓練システム
③治療結果の検証
術前術後の模型、レントゲンCTによる確認、術後調査による治療結果の確認と検証および継続的改善

ISO9001の取得実績(2004年~2015年まで)

ISO9001規格2004年取得
当医院は2004年~2015年までISO9001の規格を取得しておりました。2015年で審査を受けることをやめ、現在はエチカマネジメントシステムとして、ISO9001の規格を超えた、経営や固有技術の内容にまで踏み込んだマネジメントシステムとして、新たに生まれ変わりました。

ISO9001とは?
ISO9001とは、製造業から始まった品質管理の基準です。この基準を適切に運用することによって、一定の品質基準をクリアーした製品を生産できることから、国際的に広がってきました。
現在はサービス業にも広がり始めており、サービスの質、歯科では治療技術の提供を一定レベルに保つための取り組みとして運用されています。
残念ながらまだ歯科業界で取得している医院は非常に少ない状況です。
取得にあたり、審査は大変厳しいのですが、歯科医療サービスが一定の質を持って提供できると自信がもてる有意義なものです。当院ではISO9001取得によって以下のような改善が得られました。

1)器具・機械類の効率的な配置のための内装工事(2006年改装時、2009年移転時)
2)セファロ付きパノラマレントゲン導入(2009年4月)
3)ファインオキサーが作成する、強酸性水の効力の管理をするため、毎日pHと塩素レベルが基準レベルを満たしているか測定。(2009年確立)
4)材料、器具などのマニュアルを常に即座に参照できる体制、薬剤アレルギーや、器具の不具合などに対して、スピーディーに対応することが可能。(2009年完成)
5)患者様全員にメインテナンスシステムを導入(2010年)
6)自費カルテシステムによる会計管理と予約システムの構築(2010年完成)
7)世界標準の滅菌器LISA(滅菌レベル、クラスB)の導入(2010年導入)
8)レントゲンデジタル化による、患者さんデータの管理簡便化と、分析のスピーディー化(2010年導入)
9)4ハンドシステムによる治療の完全導入(2010年)
10)日本で発売される各種薬剤における危険確認と、危険な薬剤の排除(2011年)
11)不測の故障事態に備えた予備バキューム、予備のコンプレッサーの設置(2013年)
12)ルーペの不具合に備えた予備ルーペの準備(2013年)
13)滅菌器不具合に備えた予備滅菌器LISAを追加購入(2013年)、また専用棚と、IMSラップ用の棚の作成(2013年)
14)IMS(IMSとは治療内容ごとに、1つのキットで必要なすべての治療器具をまとめた器具セットのこと)導入により、器具の洗浄時の危険回避、作業の簡便化、および、ピッキング業務(足りない器具をその都度補充すること)をなくすシステムの導入(2013年)
15)在庫管理プログラム(当医院オリジナル)導入による、在庫管理、現在もプログラムを改良中(2013年完成)
16)TUB SYSTEM(治療内容別に使用する材料を入れたTUBを用意し、治療ごとの準備の動きを最小限にする)の構築および、TUB SYSTEMが効率よく行えるよう、棚の作り直し。(2013年)
17)画像解析の精度を高めるためCTスキャンの導入(2014年1月)
18)酸性水生成器の不慮の事態に備え、手洗い場の改装と、酸性水生成器の予備の購入(2014年2月)
19)受付の動線および、サーバーの配置を変え、作業効率を改善するための受付およびスタッフルームの改装(2014年8月)
20)治療効率の向上のため、タービン、エンジン、プロフィージェットの予備機器を購入(2015年2月)
21)診療室の換気を向上させるため、サッシの交換工事(2016年8月)

などです。当医院ではすでに多数のマニュアルが存在し、そのマニュアルに従ってアシスタントが行われるため、常に最高レベルの診療を維持できるシステムとなっています。
これはトヨタなど、製造業の品質管理システムを医療の質維持システムとして流用したもので、これにより、非常に少ない修復物の脱落率と、トラブルの減少を実現しており、患者さまからも高い評価をいただいております。

医院における材料等の安全管理

本医院で最近、多く起きたヒヤリ、ハット事例と、その改善には以下のものがあります。

ヒヤリ・ハット事例と、その改善代表例

1. 麻酔薬によるアレルギー、体調不調(オーラ注という麻酔薬は注射後に体調不良を訴える人が多くいました。今はその原因と考えられていた保存料のメリルパラフェンは入っていないようです。)
しかし、当医院では、治療中気持ち悪くなったり、貧血を起こしやすくなる人が非常に多かったです(薬剤に対する感受性は人によって異なります)。メーカーは安全と言っていますが、私は個人的には臨床の経験からいつ何がおこるかわからない危険な薬剤ではないかと思っています。
今は当院ではキシロカインを使用しています。キシロカインオーラ注の時に起こった問題は今のところほとんどありません。
しかし価格がオーラ注より高いのです。また、まれに麻酔薬のリドカイン自体にアレルギーがあり、浮腫を起こしたり、気分が悪くなる人がいます。
このような場合はキシロカインを使用することができずシタネスト(エピネフリンが含まれない麻酔薬)を使いますが、使用期限が短いのと、麻酔が効きにくい欠点があります。


2. ラテックスアレルギー(まれにラテックスアレルギーのある患者さまがいらっしゃいます。
そのような場合はノンラテックスのラバーダムを使用しています。これらのアレルギーについてはカルテのわかりやすい位置に表示され、スタッフが準備の際、間違えることがないようにしています。)


3. ネオクリーナーによる事故(根の治療に使う)ネオクリーナーは強力な薬剤で、やけどを引き起こします。
また服が漂白されることもあるので、当院では特別なエプロンを使用して、事故を未然に防いでいます。


4. 痛み止めのボルタレンは強力ですが危険も伴い、患者さまによっては腸炎を引き起こすことがあり、当医院では使用をやめました。
(実際腸炎で入院してしまった人もいます)


5. イソジンで毎日うがいをすると強力な腐食作用で歯が溶けてしまいます。
耳鼻科でもらったとしても、毎日うがいにつかうのは非常に危険です。またトレー法などでイソジンを虫歯予防に使うのはかえって歯を痛めてしまう可能性が高いので避けたほうがよいでしょう。


6. 根管充填に使用するキャナルスの液に含まれるプロピレングリコールはまれに過敏症の人がおり、その場合、使用すると非常に危険です。
このような人たちはそれまでの根管治療の経過が良かったにもかかわらず、根管充填を行うと急に痛みを訴えたりします。この材料は化粧品、3-mixMP法、根管貼薬剤などに入っていることがあり、注意が必要です。


7. 仮歯に使われるレジン(日本製のもので比較的多い)は、粘膜に対する刺激性が強く、人によってはアレルギー症状を起こします。
当医院では、敏感な患者さまには使わないようにしており、最終的には日本の仮歯用のレジンは在庫がなくなり次第使用しなくなる予定です。現在は治療に関係ない技工用の材料として使っています。

歯科治療におけるISOの継続的改善のイメージ

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