- 2014.08.13
矯正で親不知以外の歯を抜くのは?
矯正治療で(親知らず以外)の歯を抜いて治療はどうなのか?
これは矯正治療を行う上で長い間、議論になって来ました。
わたしは、口腔という機能を保つ上では、抜歯をして矯正しても決して良い結果は出ない思っています。
全身的な呼吸と歯は非常に密接な関係がありますから、歯列の一部となっている歯を抜いて矯正治療をする場合、当然その機能に問題が出る可能性は高いといえます。
また、日本人(アジア系人種)は頭の形が短頭系といって、前後的な長さが欧米人と違っており、歯が並ぶスペースが欧米人より少なく骨格的に不利です。
ですから、日本人は出っ歯気味に見える人が多く、歯を抜かずに、見た目を欧米人のような歯並びにしようとするとかなり無理があります。
その為多くの矯正医(特に矯正専門医)は歯を抜いて患者さんの要求通り審美的に仕上げようとして小臼歯の抜歯ケースが多くなる傾向があります。
一方、かみ合わせや、呼吸などの機能を治療することを中心に考えた場合、歯を抜いてしまうとどうしても、お口のスペースが減り、舌を置く空間が狭くなり、舌を置く動作が多くなり、結果的に気道が狭くなります。
さらに、歯を抜くことで、奥歯の歯列はやや前側に移動するため、かみ合わせは以前より低くなります。すると、さらに、舌の入るスペースは狭くなり、もっとひどいことに、顎の筋肉の緊張が強くなり、顎関節症の症状がひどくなってきます。
歯を抜かないで矯正治療を行った場合、抜いて治療を行った場合より、歯が前に出ているように見えるかもしれませんが、それはあくまでもの、日本人(アジア系)の人種としての特徴であり、それを無理やり歯を抜いて、欧米人の審美の基準に合わせると、体調を悪くしてしまう可能性が高いのであれば、せっかくの矯正治療も元も子もありません。
私の医院では、審美を主訴に矯正治療にいらっしゃる方はほとんどいらっしゃらないので良いのですが、審美を優先して考える患者さんの場合、万が一治療で体調が悪くなったら一体どうしているのか不思議です(実際にそういった問題のでる患者さんはたくさんいらっしゃるようです)。
本来は医学的にも、体を健全にすることが矯正の本来の目的だったはずです。いつからこのような審美中心の矯正治療となってしまったのか?やはり、歯は顔貌を大きくかかわっているためなのかもしれません。
もちろん抜歯をすべての症例でしなくて済むとは思いませんが、顔貌を欧米人のようにしたいがために、抜歯することによって、体の調子が悪くなってしまう患者さんも多いのです。
矯正学の始祖であるアングル先生は、自分の奥さんを抜歯して矯正したところ、大変な失敗となってしまったことに深く後悔し、抜歯をして矯正することに及び腰になったといわれています。
抜歯をしないで矯正をし、どうしても願望が納得できない場合は抜歯をしても仕方ない思いますが、顔貌の改善からいきなり抜歯をするのはあまり好ましくない気がします。
これもこのような審美治療を求める患者さんとそれにこたえる歯科医の健康のための矯正であるという意識が高くないからだと思います。医療界では美容整形は医療と思われていません。健康は失ってからその大切さに気付くものです。審美は第一番目の治療の目的ではないことに多くの人が気が付いてほしいと思います。
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