歯科医療に対するコスト意識を

  歯科医療に対するコスト意識を

お役立ちコラムCOLUMN

2013.04.01

歯科医療に対するコスト意識を

日本で歯科治療をしていると一番強く感じるのは、患者さんのコスト意識の著しい低さです。

私の医院は自由診療しか行っていないので、ある程度の意識を持っていらっしゃる方が多いのですが、それでもまだ世界的な常識とはかい離しています。

歯の治療を現代の技術レベルできちんと行おうとすれば、ルーペなどの拡大鏡や、顕微鏡など精密な治療を行うための器具が必要となりますし、実際それを使うと非常に治療時間がかかります。

また、細かい作業が伴うため、非常に疲れます。

保険制度では1本の歯の治療をしても、高くかかっても3,000円程度、歯科医が受け取る分を考えても、10,000円程度です。

しかし、考えてください、免許も持っていないマッサージをする人が、1時間何の道具もいらない場所で働いても、6,000円位は相場ではないでしょうか?

歯科治療は、院長のみならず、歯科助手や歯科衛生士など、患者さん一人の治療にかかわるスタッフはドクターも入れて最低2人以上、しかも、すべて専用の器具で毎回滅菌をかけなければなりません。

滅菌を行うオートクレーブは、きちんとした機能をもったものだと、器械だけで100万以上、空気を浄化する滅菌フィルターや、特殊な水を使い、高額なメインテナンス代など、ランニングコストが膨大にかかります。

また歯科用の治療椅子は一台300万円以上、レントゲンも600万円以上もします。
内装は床上げや、排水工事、バキューム、エアー配管などごく普通の医院でも2,000万以上かかり、医療ではもっともコストがかかる科目です。

私の考えでは、きちんとした治療を一人の患者さんにおおなうためには、治療時間は麻酔や、説明も含め最低1時間は必要です。

そう考えると、保険制度できちんとした治療を行うのは不可能というのは歯科医が誰でも知っている事実です。

つまり、世界標準でいう一般的な治療を行う相場の1/10程度の治療費しか払われないということになり、マッサージでいうと、全国一律1時間600円で行いなさいと制度がきめているようなものなのです。

当然時間を短縮したり、手間を省くしかならなくなります。
そのため、粗製治療の乱造が起こり、日本の口腔内事情はとても褒められたものではありません。

もちろん、お金がない人にとってありがたい制度ではありますが、歯科業界全体で見回すと、全くよくない制度だと見えてきます。そもそも個人技による歯科治療を全国一律料金にするなどあり得ない話だからです。

つまり、歯科医がまともな治療を行える環境とは言い難いのです。

勿論、歯科医もこういった事実を患者さんに伝えつつ、自由診療を行うべきですし、患者さんも、保険という枠にとらわれるのではなく、自分の歯を長持ちさせるにはどうすべきかを考えるべきでしょう。

今の歯科医療を見ていると、ほとんどの先生が歯のもちとは全く関係のない、審美治療やインプラントなどの自由診療に移行しようとし、本来の歯を残す治療にこそ、費用をかけるべきと考えている先生が少なすぎるのです。

もっとも大学の教育自体も歯を残すためにはいったいどんなを教育しなければならないかを考え直し、自由診療でも患者さんがお金を払ってもよい治療技術を教えてゆかねばならないと思います。

日本が歯科で世界のレベルに追いつくにはまだまだ時間がかかることでしょう。

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