インプラント問題にまた一つ話題を

  インプラント問題にまた一つ話題を

お役立ちコラムCOLUMN

2012.06.08

インプラント問題にまた一つ話題を

インプラントが今世間を騒がせているが、そもそもなぜインプラントがこのように問題を引き起こすようになったのか?
その原因を見つけなければ、単に騒いでも何の意味もないと思うのです。

そもそも、インプラントは、困窮する歯科医が切り札として考え出した打ち出の小づちなのです。

もしかしたらインプラントがなくなると、日本の歯科医はどんどんつぶれてしまうかもしれないのです。

日本の歯科の保険制度はすでに崩壊しているといって間違いでなく、実際、まともな歯科診療をして、保険だけで、経営が成り立つのは、かなり難しいといえるでしょう。

かといって、国民皆保険制度が根付いている日本で、自由診療を取り入れるのは難しいのです。

たとえば、根の治療きちんとしようとすると、保険ではなく自由診療で行わないと、コスト的にかなり無理があります、根の治療をきちんと行うためには顕微鏡などを用いて、根の中まで十分に観察して行う必要があり、奥歯では4時間から5時間ぐらい、顕微鏡を見ながらのマイクロサージェリーが必要だからです。

しかし、実際は根の治療を自由診療にすると、混合診療の考え方から、保険治療すべてを放棄せざるを得なくなります。(根の治療は自由診療で行う場合、時間はかけても、材料に特段違うものを使うわけではないので、保険医療機関では、保険診療でできる治療という解釈になってしまうのです。)

さらに感染予防は歯科では最も重要なのに、その費用を保険で賄うことは、世界標準のレベルの感染予防を行うのであれば到底不可能と言わざるを得ません。現在の保険制度では420円が患者さん来院ごとにいただけるようになっていますが、この金額で、歯科医とアシスタントののグローブ代、感染予防にかかる費用等を負担するにはいささか安すぎます。(滅菌器や様々なディスポーザブル物品などのコストを考えるとちょっと無理があります)

しかし、その費用を自費でいただこうとすると、また保険制度の足かせが問題になるのです。

ですからもし本当にきちんとした治療をしようとする先生はすべて自由診療にするか、赤字覚悟で治療を行うしかありませんが、そうやって生き残れる先生は日本にも何人もいらっしゃいません。

つまり、保険をやりながら、自由診療も取り入れるという、混合方式が最も現実的になるのですが、そうなると、片方で、定食屋をやりながら、同じ店でフランス料理も出すといった、かなり矛盾した経営形態になってしまうのです。

しかし、定食屋と、フランス料理では、食器も、食材も、そしてコックの求められる技術も根本が違いますので、一緒にやること自体不可能ですし、矛盾だらけになってしまいます。

現在のインプラント批判は、歯科医療において、それをそうせざるを得ない環境にさせておきながら、「日本のフランス料理はまずいではないか?」と言っているようなものです。

本当にうまいフランス料理を食べたかったら、「フランス料理の専門店に行ってほしい」のですが、「日本ではその店がほとんどない」、というか「お客がはいらないので店を維持できないので定食屋と一緒にするしかない」といったところが、今の日本の歯科の現状ではないでしょうか?

イギリスでは、保険制度はありますが、多くの医院は自費診療専門になっています。アメリカは自由診療のみです。

つまり、イギリスでもアメリカでも、歯科は相当高額の費用がかかる治療なので、保険制度になじまないといった感覚があるのではないでしょうか?(費用が掛かりすぎて保険制度では制度自体を維持できない)

患者さんも、歯科にかかるときはこのような現状をきちんと理解して、慎重に歯科医選びをするべきでしょう。

アメリカなどでは、とりあえず治療できるレベルからかみ合わせまで含め高度な治療を提供するレベルまで様々なレベルの歯科医がおり、自分のニーズに合った歯科選びをしています。

ただし、感染予防に関しては、法律で定められているので、日本のような低いレベルの感染予防を行う歯科医院は皆無に近いと思います。

一方日本はほとんどが定食とフランス料理を同時に提供している様な医院ばかりで(これは保険制度の大罪といえます)、衛生面も高いレベルを維持できている歯科医院は少ないと言わざるを得ないのです。

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