- 2020.04.14
知らないと損!”審美治療”の落とし穴
このページは2022年8月26日に更新されました
最近、見た目の良さを売りに「ノンメタル治療」といって「セラミック」や「レジン(樹脂)」による治療が盛んにおこなわれています。
しかしこのような「審美性の歯科材料」は歯の治療で使う上では問題があまりにも多く、特に奥歯に使える材料ではないことを知る必要があります。
私たちが歯の治療を受ける理由は「噛める、味わえる、虫歯にならずに歯を長持ちさせる」ではないでしょうか?それを可能にするには奥歯に金属材料を詰める以外にないのです。そんなあたりまえのことさえ知らない歯科医が多い今の歯科業界は非常に由々しき事態なのです。
実は虫歯に充填する材料は、「歯科医療の歴史の100年(古いものでは4000年以上の歴史があるものもあります)」の中で、ほとんど「メタル(金属)使われて」きました。それにはきちんとした理由があるのです。
近年頻繁に行われるようになったノンメタル充填(レジン、ポーセレンなど)は、本当に大丈夫なのでしょうか?勧められるままに安易に金属の詰め物を外してはいけません。このページを読むことで、なぜ審美材料は歯の治療に向いていないのかを理解することができると思います。
なぜ歯科医は昔から金属材料を選でいたのか?
①.歴史と信頼に裏打ちされたアマルガム充填
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①.歴史と信頼に裏打ちされたアマルガム充填
歯科用アマルガムは最も信頼性の高い歯科用の充填材料の一つです。アマルガムには以下の5つの特徴があります。
A.即日充填、その日に噛んでも大丈夫
アマルガムは金属でありながら、混和した直後は雪のような充填しやすい状態で、金属材料の中で唯一アンダーカットのある虫歯にも詰めることができます。500年以上も昔から使われてきたという記録があります。
アメリカ製のものは僅か5分程度で固まり、1時間以上経過すると物を噛めるほどの硬さ
になります。操作性がよく治療したその日に使うことができる非常に優秀な材料で他に代え難いメリットがあります。
削ったその日に充填できるので仮歯の間の「細菌感染のリスクを避け」、「噛み合わせが変化するを防ぐ」ことができるのです。
B.抗菌性がある
アマルガムは抗菌性がある材料で、充填した部分の細菌の増殖を抑え「2次カリエス*1」を起こしにくい材料です。実際に40年以上も前に充填したアマルガムを除去しても全く虫歯になっておらず、驚くことがあります。
C.耐摩耗性に優れ、適合性がよい
アマルガムは充填後膨張する唯一の「直接法充填*2材である金属材料」です。材料と歯との境界が殆どできず、耐摩耗性と適合性に優れます。また、抗菌性に優れ、修復後の違和感がありません。
D.歯の切削量が少ない
アマルガムは金属でありながら、アンダーカットがあっても充填可能な唯一の金属材料です。通常の金属材料は歯を削る量が多いのですが、アマルガムは例外です。
②.歯医者も使いたいゴールド修復
歯科治療でも最高の治療は今も昔もゴールド修復であることは変わりありません。ゴールドには以下の3つの卓越した特徴があります。
A.適合性が秀逸
ゴールドは鋳造精度が最も高く、加工がとても行いやすい材料です。
展性*3が高く詰め終わった材料のマージン部分を伸ばすことで適合性を向上することができるのです。
B.耐腐食性、耐圧、耐摩耗性、静菌性に優れる。
奥歯のかみ合わせには場合によっては30kg以上の咬合力がかかることがあります。
強い圧や、酸、アルカリなどの口腔内の環境の変化に対応できる最高の材料がゴールドなのです。
また金自体に「静菌作用」があるため、菌の増殖を押さえます。
C.噛み心地が秀逸
噛んだ感触最も優れている材料がゴールドです。自分の歯を痛めることな噛みしめることができ、さらに強い力がかかると適度に摩耗してくれます。
③.機能性に劣る審美材料の使い方
審美材料(歯と同じ白い材料)は金属材料に比べると機能性が劣ります。審美材料には以下の3つの材料があり、使える治療には制限があります。
A.レジン(樹脂)
レジン(樹脂)は最近審美材料として頻繁に使われるようになってきました。
強度も以前のものより良くなっていますが、「金属とは全く異なる材質」であり、摩耗が早く、吸水性があります。
あたかも金属との「耐久性比較で遜色がない」かのように書かれた記事を見かけることがありますが、それは「全く正確ではありません」。
また「樹脂」で耐摩耗性は弱く、強い咬合力がかかる場所には充填できる材料ではありません。
また、抗菌性や静菌性がないため
前歯などに使う場合も耐久性に限界があるので、「定期的に交換を行う必要」があります。レジンは水分を吸うため、「金属材料より不衛生になりやすい」からです。
レジンは歯と接着させるため、象牙細管*4にモノマー*5をしみこませるため、歯とレジンとの境界がわかりにくく、再治療が難しく、歯を痛めるリスクがあります。
B.歯科用セメント(グラスアイオノマーセメントなど)
セメントは、接着剤を用いなくても歯に着いて充填できる材料で、通常は歯と金属材料などを合着*6させるために使います。セメントは歯髄に対する刺激が非常に少なく安全性は高いですが、強度は弱い欠点があります。
また充填用グラスアイオノマーというものがあり、比較的強度が必要のない前歯や、歯頚部(歯の根元の部分)に使われます。特に歯の根元部分は神経が近く、刺激が殆どないグラスアイオノマーは最も適しています。
C.セラミック
セラミックはゴールドなどと同じ型をとって間接法で製作される材料です。また薄いと割れてしまう性質があり、歯を削る量はゴールドより遥かに多く、噛んだ時の感触はゴールドやアマルガムのようにしっくりきません。
近年「セレックシステム」*7という光学印象を用いた治療が増えていますが、奥歯ではセンサーを正しく挿入しにくく、光学印象の精度は低く、非常に問題のあるシステムです。
国の助成金を使って購入している歯科医院も多いですが、臨床上適切な治療法とはとても申し上げられません。
このような治療を進められた場合は十分に検討されることをお勧めいたします。
④.金属アレルギーのウソ、ホント
金属アレルギーを理由に全ての金属を外し、メタルフリー治療を採用する医院があります。しかし、金属アレルギーは、実はその原因もはっきりしていない症状であり、費用や、治療後の経過を考えてみると金属を外してメタルフリーの治療をする積極的な意味はありません。
アレルギーは金属だけでなく、レジンのような樹脂にもあります。メタルフリーでも樹脂フリーの治療は存在しませんから、そのようなこともよく勉強した上で治療を受けましょう。
歯科医院経営のために審美治療をあえて薦める先生もいますので注意が必要です。
*1 2次カリエス・・治療した後に虫歯が再発した際の虫歯のこと。初めて虫歯ができた場合はバージンカリエスと呼び区別される。
*2直接充填法・・・歯科治療で材料を直接歯に詰める方法。時間とともに固まる材料と、光などを当てることで固まる材料がある。レジン(光重合)、アマルガム、グラスアイオノマー、などがある。間接充填法より充填精度は高い。
*3 展性・・・・・圧力などによって材料が広げられる性質、金やすずは高い展性を持つ
口の外で加工するため、時間的制約がなく強度の高い材料を用いることができる。精度は技術にもよるが通常、直接法より劣る。
*4 象牙細管・・・歯の構造のうち、エナメル質より深い部分にある象牙質にある感覚をつかさどると言われている細かい穴。
*5 モノマー・・・レジンを接着するために流す、液状モノマー
*6 合着・・・歯科材料を歯に着けること
*7 セレックシステム・・・光学印象(赤外線で3次元映像を撮影して、光学による型取りを行う印象法)で撮影した型から、セラミック材料を3Dで削り出して修復物を製作するこシステム、実際は光学印象の精度を出すことが難しく、また噛み合わせの面を今までのデータを利用して製作するため、精密性に問題のあるシステム。
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