- 2010.06.13
デーモンブラケットは工夫が必要
最近矯正界でも何かと論議を巻き起こしており、賛否両論のあるデーモンブラケットですが、このブラケットは使い方を間違えると非常に治療が難しくなってしまいます。
私がそのことに気がついたのは導入して1年半程度が立った後です。
メーカー、およびいろいろな先生に聞いて、デーモンについて聞くのは、その賛否両論です。
その多くが、「思ったように歯が動かない」、とか「最後に仕上がらない」といった細かい調整についてです。
また歯の移動中に隙間が開いてくることや、ブラケットが取れ易いといった点もかなり問題視されていました。
しかし私の出した結論では、これらは今までと全く違う考え方で動かそうとする矯正治療が直面する問題点に他ならないとわかったのです。
つまり、今までの矯正治療が強制治療であったのに対して、デーモンブラケットは力を添えるだけの矯正治療であるということです。
デーモンブラケット自体は悪くないのですが、その性質を理解しないまま、先生が使用したり、正しい使い方を教育しないままオームコ社が機構の優位性で売り込んでしまったことが、使い勝手の悪さと、うまく歯が移動できない苦情を生んだのだと思います。
今までの歯の移動はいわばかなり強い力で歯を移動させていました、つまり強いワイヤーの力で歯を動かしていたので、歯は動くのですが、患者さんにとってはかなりの苦痛であり、しかもそれになれてしまうので、普段はあまり感じていませんが、顎周囲に異常な負担が生じています。
通常歯を適切な位置に移動させるために、ストレートワイヤー法であっても、ワイヤーにトルクという曲げを入れますが、このトルクは歯に非常に強い力をかけるため、デーモンブラケットのように弱い力で移動するシステムにはこのようなトルクを与える方法は不向きなのです。
また、人間のかみ締めの力は意外に馬鹿にできません、かみ締めの力によって歯が動いてしまうという、デーモンブラケット特有の問題も起きてしまうのです。これらのわずかな力で動いてしまうという特性をうまく利用すると、デーモンブラケットは驚くべき特徴と、驚異的な歯の移動を見せてくれます。
私自身実際に患者さんに使ってみて、こんな方向に歯はもう動かないだろうと思うような場合でも治療を行うことが可能でした。
ただし、顎間ゴムといって、上あごと下あごにかけるゴムを多用しなければならないことが唯一の欠点で、話したりする機会の多い人には難しい問題です。
というのはゴムを長時間かけることによって歯が動いてくれるからで、長時間のゴムをかけることは根気のいる作業だからです。
将来はもう少し工夫して早く動くようになることを現在は研究中です。
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