歯科に見るブラック

  歯科に見るブラック

お役立ちコラムCOLUMN

2018.10.16

歯科に見るブラック

歯科医院は一見華やかそうで、とても地味な職業です。

最近では歯科のブラック医院の問題が起きているようです。経営難で予防中心に切り替え、歯科衛生士に稼がせるスタイルがはやっていますが、歯科衛生士の負担過重と、本来の歯科治療がおろそかのまま患者さんを大量に集める宣伝に汲々とする歯科医医院そんなタイプの歯科医院が増えてきています。

最近ではホームページに対する広告規制を厚生省が乗り出しましたが、「ホームページに偽りあり」で良好な経過を得られるかのように見せかけた治療法、歯科医学の基本もわかっていないような治療法をあたかも最新の治療のごとく宣伝し、また出来もしない技術を持っているかのように偽装するホームページがとても多くなっています。

宣伝が派手で、分院がたくさんある医院ほど危険ではないでしょうか。実際は宣伝広告費と運営の基本費用を稼ぐために、医師には保険ではまかないきれない分の自由診療のノルマを課し、受付や助手スタッフにはコーディーネーターと名前をつけ、治療する本人でもないのに治療コースを患者さんに説明、説得してノルマを達成し歩合を稼ぐ。そんなスタイルを強いられたスタッフは、倫理観から退職する人も少なくないと聞きます。そして退職者を補うための採用費が医院の負担になるという負のスパイラルが出来ています。

実際に分院展開している医院の多くはきちんと治る治療もしていない割りに、経費を抑えた治療をまわすことと辞めてゆくスタッフの欠員を補う新しいスタッフの確保と教育に追われ、いったい何がしたいのかわからなくなっている状態の医院を数多く見て来ました。

ある大きい分院展開の派手な医療法人の歯科医院でぼろぼろにされた患者さんが当医院にいらっしゃいました。顎関節症を治してもらおうと、何冊も本を読んで(実際治療もできないのに本だけはたくさん書いています)治療技術に期待して治療を受けたらしいです。その患者さんを診た歯科医院の院長は、「非抜歯矯正」で何冊も本を出している大きな法人の歯科医です。

以前読んだ、その先生の告白の中で、自分は開業しても患者さんが全くこなかった、どんなことをしても結局患者さんは増えず、閉院寸前となりました。そのとき、両親に「地元に戻ってきなさい」といわれたが、一年奮起、本を書いたことで「患者さんでいっぱいの歯科医」にすることができた。とサクセスストーリーを回想しています。

患者さんを治せる技術も習得しないで、本を書いたことで自分が稼げる医院の院長になれたということが、歯科医の人生に一体何の意味があったというのでしょうか?

本当はお母様のおっしゃるとおり、田舎に戻り、細々とそれなりの技術で少なくとも患者さんの痛みだけでも取り除ける歯科医でいきてゆくか、少しずつでも治療技術を身に着けてから開業するのが本来は良かったのではないでしょうか?

歯科医には(医師もそうですが)中途半端なプライドが邪魔をして本質を見失う人がたくさんいらっしゃいます。たとえ医師になれたとしても、人には向き不向きがあるますから、自分の想像する華やかな成功だけが本当の成功ではない、医師としての成功の形はいろいろあると思うのですが、それに固執したため、患者と自分そしてそこで働くスタッフ皆を実際には不幸にしている。そんな悲しい現実が、笑顔で写る院長の写真の裏に見え隠れします。

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