最後のフロンティアである歯科矯正

  最後のフロンティアである歯科矯正

お役立ちコラムCOLUMN

2018.07.03

最後のフロンティアである歯科矯正

歯の治療は、虫歯の治療、根管治療、入れ歯の治療、歯周病、抜歯術、矯正治療など、さまざまなジャンルがあります。
その中で最も難しいと私が個人的に感じるのは根管治療と矯正治療です。
この二つは習得するのに最も苦労しましたし、今でも悩むことがあります。
根管治療は特にミクロの治療になるので技術的に習得が難しく、治療時間が長くかかるため、体力的にもとても消耗します。根管治療をまじめにする先生はとても良心的な先生といえると思います。
一方で矯正治療は、全身と大きく絡んでくるため歯だけではない非常にマクロな視点で治療を行う必要があります。
残念ながら、多くの矯正治療が審美目的で行われているため、身体に対するマクロの影響を考慮した治療がほとんど行われていないのが現状です。
矯正治療による噛み合わせの変化は、体全体に大きな影響を及ぼすため、歯科医にとって最後のフロンティアだと私は考えます。
矯正治療には未だ確固たる理論が出来上がっていない正しい顎の位置を採得する技術、支点のない歯同士をコントロールしながら移動させるための複雑な支点、力点、作用点の関係を理解しながらワイヤーの曲げを利用した治療技術、そして歯がしっかりとかみ合うためにどの位置にブラケットを装着するのかという技術、3つの要素がいずれもかなり高い精度で要求されるため、非常に難解な数式を解いてゆくような治療技術だからです。
私が矯正治療を始めてから18年以上になりますが、ほとんどの時間は、顎の3次元的な位置をどこへ移動させれば身体のバランスがもっともよくとれるのか、ブラケットをどれだけ正確に位置につけることができるのか、そして引っ張れば必ずお互いに移動してしまう歯同士をどうやって自分の動かした方向へ移動させるのか、の3点の究明に費やされました。
ブラケットの位置付けに関しては幸いにして、先人の白須賀先生が30年以上の研究の上、素晴らしい理論とそれを実現するための器具を作ってくれていました。また、歯をコントロール方法に関しては、マリガンという先生が、ワイヤーの曲げ方とゴムのかけ方で歯がどのように移動するかの理論を作り上げていました。
そして、最後の正しい顎の3次元的位置は、何を調べても納得できる捕らえ方がどうしても見つからず、結果的には私自身が受けた整体やオステオパシーなどの代替医療の経験から究明することになりました。筋肉が緩むと顎はどこに行くのかという考えから生まれたもので、自分の顎をそこに移動させることで体調が格段に向上したのです。この3次元的な位置を理解できたことで、矯正治療は今までにないほどの確実に成果がでやすい治療(特に顎関節症を訴える患者さんには)になったと思います。
矯正治療で3次元的な顎の位置を決めることは、先に行き先を決めてから航海をはじめる(歯を並べる)ようなものなのです。これができるようになれば、矯正治療は今までの審美中心から、体全体のバランスを整える本当の意味での矯正治療へを大きく変貌するはずです。

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