顎関節症治療、日本の問題点

  顎関節症治療、日本の問題点

お役立ちコラムCOLUMN

2019.08.13

顎関節症治療、日本の問題点

歯の治療が原因で顎関節症になってしまうことが多い日本の現状

実際、これらのかみ合わせの治療を行ってトラブルを起こしてしまった事例では、治療に当たったドクターがかみ合わせに対する十分な知識がなかったり、非常にフレキシブルな構造をもった人間の体というものを理解して治療していなかったり、といったいずれも治療に対する知識不足が原因で起きていることが多いといえます。

(「さまざまな顎関節症の治療法への見解」参照)本当に顎関節症で苦しんでいる人にとってはお金を払ってでも治してもらいたい反面、いったい誰の話を信じてよいのか、かみ合わせを治すべきなのか、様子を見ながら耐えたほうが良いのか悩んでいる人が多いのではないでしょうか?

(私の経験から言えば我慢できるような苦しみではなく、はっきり行って自分の将来に非常に不安を覚えるほどの深刻な問題です)

大学教育と日本人の潜在的な顎関節症患者

日本の歯科大学の専門課程ではかみ合わせに関する教育がなされることはほとんどなく、大部分の先生が卒業後、試行錯誤で見つけ出した治療法を患者さまに行っているのが現状です。

卒業後の研修でも「かみ合わせ」に関して実際に"ハンズオン"といって、治療の仕方を手取り足とりで教えてくれる機関もあるのですが、その数は少なく、しかもかなりの時間と費用がかかるために、なかなか忙しい開業医の先生が勉強に出かけて行くのは難しいのが現状です。

ちなみに歯科先進国のアメリカでは、大学でかみ合わせに関する授業はカリキュラムの中に組み込まれており、卒業までには少なくとも患者さまの正しいかみ合わせの位置を採得する方法を必ず習得させてくれます。しかしながら、アメリカですら、特別な大学院教育をうけなければある程度の顎関節症に対する正しい治療法を教えきれていないのが実際の現状なのです。

いずれにしても高い授業料を払わされていながら、きちんとした教育を受けさせてくれない今の日本の歯科大学の体質にかなりの問題があるといえます。日本ではこのように十分な教育がなされていないため、かみ合わせに関する理論を知らないまま歯科大学を卒業してしまう先生が大勢いるのです。

こんな現状から、日本人には顎関節症の患者さまの数がアメリカと比較にならないほど多いといわれています。自分で顎関節症だと気づいていない人も含めると潜在的には莫大な数の顎関節症の患者さまが日本にはいると考えられるのです。

これは、日本の歯科治療のレベルが、アメリカよりはるかに低く、また、さらに日本人がかなり繊細な人種5人に1人はHSPである)であるという2つ要素が相乗効果となって、よりたくさんの顎関節症の患者さんがいるのです。

また顎関節症は、首や肩、さらには全身に凝りを引き起こすことがわかっており、これにより日常生活に支障をきたしたり、体調が良くないために仕事の効率などが下がり、経済活動に悪影響を与えていることは否定できません。自分で気づいていない人も顎関節症について正しい知識をもって、治してゆくことを考えるべきではないかと思います。

クリニカルパスと治療

当院では、現在までの治癒に至った患者さまの経験から、一定のクリニカルパスを作成し、これに従い、どのような症状やケースにおいて、どのような治療パターンで治癒可能なのかを検討して治療を行っています。これらの治療法はもともとアメリカの大学で実際行われていた方法を採用し、診断等はヨーロッパの考え方なども取り入れて行っています。

治療は、ナイトガードやプレート(費用は54,000円)を夜寝るときだけはめていただき、その効果を見ることから始まります。これは不可逆的な治療ではなく、調子が悪くなったり、効果がなければいつでも取りはずす事ができるので、比較的安い費用で(決して安価という意味ではないが)つらい症状を取り除き、治癒の方向性を見極めることができる方法です。

この装置によって顎関節症の症状に一定の効果が認められた場合は、かみ合わせが原因であると判断し、歯とかみ合わせの治療に行ってゆくという方法で治療をおこなっております。

残念ながらナイトガードやプレート療法を行ってもあまり改善が認められないケースもまれにあります。そのような場合にかみ合わせの治療をいきなり行うのは危険です。

また稀に歯科心身症という疾患の方がいらっしゃいます。いわゆる心気症と昔から呼ばれ、やたらと検査を要求する方がいらっしゃることも事実です。本人は不調を訴えていますが、実際は疾患は無かったりします。

本当の顎関節症の患者さまは実際はもっと深刻です。

私の経験では、顎関節症は、矯正治療を行わないと完治しないものがほとんどです。適切な矯正治療を行えば、単に見た目だけでなく、顎周囲や体全体のバランスまでとれた体になることが知られていますし、顔つきや体調も見違えるほど変わってきます。これは実際に当院で治療が終了した患者さまに多く認められています。

顎関節症の治療を受ける際のアドバイス

このようにホームページ上で治った症例について書くことは誰でもするのですが、実際に本当に治っているかという事実を患者さまは確かめることはできません。先生に自分の状況についてじっくり相談し(長時間の相談には多少費用もかかるでしょう)

治癒にいたった患者さまの症例を見せてもらうことによって、この先生なら治療をきちんとやってくれそうだと確信できてはじめて治療を受けることを決めるべきだと思います。

私の場合、治療にいらした患者さまに適切なかみ合わせの位置を与えるとほぼ100%症状の軽減を訴えます。
人によっては、涙を流して喜ぶ方もいらしゃいました。私自身も経験してきた顎関節症のつらさを考えると、医院探しを苦労してされた方の気持ちはひとしおであろうと想像できます。(実際は歯が原因と気づくまでに相当の時間と労力を要するものですから、更に治療技術がある医院を見つけたときの喜びは相当なものだと思います)

正しいかみ合わせの位置とは?

顎関節症の治療は最終的にはどの位置にかみ合わせにしてゆくのかという目標に収束します。すなわちどこにかみ合わせを与えるべきなのかがわからなければ治療は完成しないのです。それは勘でやってもうまくいきません。私が顎関節症の患者さまを多く手がけてわかったことは、患者さまごとに相当のバリエーションがあるということです。

つまり2級の症例(上が出っ歯)の場合はかみ合わせを後ろに押し込んでしまうことが多く、また3級の患者さまはあまりそのようなことが起こりにくい(起こらないわけではない)と言えます。そして長年かみ合わせが狂ったままであると咬合平面自体が相当変化しているため、矯正治療がどうしても必要になります。

私の場合、もっとも苦しんだのは、どこにゴールを持って行くべきか(かみ合わせの位置)がわかっても、その位置で噛めるように歯を動かすことが非常に難しいということでした、なぜなら通常顎のずれは場合によっては1センチ近くもあり、しかもそれが顎の筋肉の緊張によって狂ってしまっているという複雑な因子を含んでいるためです。

そのような事実を述べた治療家は今まで一人もおらず、まして治療法を教えてくれた治療家など全くいなかったために、治療法を確立するのに相当苦労しました。現在では時間は少々長めにかかりますが、確実に治す方法を確立できています。

またかみ合わせの位置は一発で決められるとおっしゃる先生がいるようですが、そのような患者さまはむしろまれ、いやおそらくいないでしょうし、自分でかみ合わせがとれていると思いこんでいるだけで、大部分が後ろに押し込んだり、一時的に調子がよい位置を取っているだけだと思います。
ですから、一時的に調子がよくなってもすぐに調子が悪くなったり、いつまでたっても調子がよくならなかったりします。

これはスプリントで体調がよくなる=首や顎、そして肩の周りの筋肉が変化する→かみ合わせが変化する→スプリントの位置はもはや最善の位置ではなくむしろ苦痛である。

といったことが起こっているからです。
しかし、この筋肉の変化量、そしてスピードは人によってまちまちです。
私が観察してきた限りでは、早くて半日、平均すると1週間前後で変化が起こり、体調が改善する反面、今までのスプリントでは却って体調が悪くなります。

私がフラットな面の入れ歯を製作するのもこれが理由です。入れ歯の人はほぼ100%顎関節症になっており、かみ合わせのずれと、顎と首肩などの筋肉がバランスを失っているため、かみ合わせの位置は非常に固定しにくくなっているからです。

間違ったかみ合わせの代表として、押し込んだ場合、患者さまが首の痛みや、肩の凝りを訴えることが頻繁に見られます。
あまり奥に押し込みすぎた場合、息苦しくなったり、眠っているときに睡眠時無呼吸症候群の症状を起こす場合もあり、非常にかみ合わせの治療は怖いと認識しています。これらの治療に経験のないあるいはわかっていない先生が手掛けると大変なことになることは確かです。

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