日本の歯科は感染予防さえままならない

  日本の歯科は感染予防さえままならない

お役立ちコラムCOLUMN

2014.12.15

日本の歯科は感染予防さえままならない

歯科における感染予防は、実は先進国では至極あたりまえのこととなっています。

しかし、日本では、保険制度の問題、厚生労働省の薬事承認の問題など、様々な規制が邪魔をしてこのこと当たり前のことさえきちんとされている歯科医院は皆無に等しいのです。

たとえば、歯科用ユニットの水の問題、これに関しては当医院のホームページで紹介しています。

「歯科用ユニットから出てくる水はトイレの水より汚い」といわれています。これはユニットに出る水の導水チューブに水が滞ってしまうため、中で水カビが生じるために、蛇口から出てくる水とは違って、細菌の量が大量であるということなのです。

しかし、根管治療などで神経を抜く治療をするすると、いくら痛みがあって炎症があっても、根の中はほぼ無菌状態です。この無菌状態の歯に、水道水を使った水をかけながらタービンで削ったとすると、無菌の場所に細菌をかけながら治療をすることになるのです。

これでは治療とは言えません。少なくとも、チューブ内を殺菌できる水を使用すべきでしょう。

つまり、根管治療にはどうしてもユニットの水が殺菌されている必要があるわけです。しかし、日本では高額な治療費を頂いている根管治療の専門医ですら、このような水を使って治療をしている先生は少ないのではないでしょうか?

細菌入りの水をかけながら根管治療しているわけですから、何のための治療かわからなくなってしまいます。

また、一方、口腔外科領域では、埋伏歯と言って骨の中に埋まっている歯を抜く場合がありますが、この時、タービンで歯を割る場合があります。その時は当然水をかけます。

大学病院ですら、この滅菌水をユニットに流している大学はほとんどありませんから、細菌入りの水をかけながら骨や歯を削って歯を抜いているわけで、このような抜歯をすること自体感染のリスクから言って非常に恐ろしいといわざるを得ません。

また虫歯の治療をする際も、神経がいつ露出するかわからない状況で、細菌入りの水をかけながら治療しているわけです。
つまり、私の眼から見たら、治療しているのか、細菌感染を引き起こそうとしているのは全く分からないわけです。

しかし実はこれも、日本の歯科医院が導入できない事情があります。
このような機能水や、殺菌水は厚生労働省が薬事承認しないため、保険の診療では使えません(保険制度では国の薬事承認や保険で使用できる承認を得たものしか使えません)。つまり、診療に絶対必要な当たり前のことを行おうとすると、その歯科医院のすべての治療が保険外になってしまうということです。(これは混合診療を禁じた規定があるからです)

保険診療を全くやれないという状態で歯科医院を経営しようとすることは、歯科医院が多く、競争が激しい今の世の中では非常に困難なことなのです。

つまり、国の制度が邪魔をして、日本の歯科医療を先進国のレベルから大きく引きずりおろしているといえるのです。

もちろんきちんと治療を行うことが歯科医にとって当たり前のことなのでしょうが、制度が邪魔している以上先生をすべて責めるわけにもいきません。

また、タービンやエンジンの滅菌が7割の歯科医院で行われていないと読売新聞で報道されましたが、これは、あくまでも普通のオートクレーブの話です。日本ではオートクレーブはクラスNと言って、やや滅菌レベルの落ちる滅菌器しか売れていなかったため、実際はタービン、エンジンを滅菌していても中までは完全に滅菌されていません。つまり、不完全な滅菌システムで滅菌している歯科医院を含めても7割ということですから、実際は10%程度の歯科医院が本当にきちんと滅菌をやっているかどうかといったレベルではないのでしょうか?(クラスBの滅菌器で滅菌しなければタービン、エンジンの中までは滅菌できないのです。クラスBの滅菌についてはこちら)

しかし、これら機器を取り入れるには相当な投資が必要で、それを感染予防費として実費で患者さんから頂きたいのですが、これも保険の制度で邪魔をされてままなりません。

このたった2つのポイントを見ていても、保険制度や日本の薬事制度の問題が歯科医療の発展を邪魔していることがよくわかります。

今の制度のままでは、日本の歯科はアメリカなどから30年以上水をあけられた状態から追いつくことは相当難しいといわざるを得ません。

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