- 2017.06.02
- 顎関節症
顎関節症と私の出会い
私と顎関節症との出会いはもう25年以上も昔になります。
当時は東京医科歯科大学で医員をしていた関係で、知り合いからいろいろな患者さんを紹介されたり、診る機会がありました。そしてその中でも多かったのは顎の不調の患者さんです。顎関節症は当時から多い疾患だったと思います。
あるとき学生時代に臨床実習で診療させていただいていた部分入れ歯を作った患者さんを私の同級生が診療しているのだが、自分は大学を辞めるので続きの治療をして欲しいといわれました。
私もしばらくしたら大学を辞める予定でしたので、断ろうと思いましたが、自分が昔診療した患者さんでしかも久しぶりなので一応お会いしようということになりました。
すると、どうやらその患者さんは顎関節症で悩んでいらっしゃるようで、顎の調子が悪いと訴えていらっしゃいました。
当時担当した同級生の歯科医は「ちょっと神経質になっている様だ」といって私に紹介することを申し訳なさそうにしていました。
大学病院では顎関節症の患者さんは一種の心身症のような扱いで治らないけど何とか上手くお話して治療を納得してもらうしかないといった感覚ですから、ちょっと迷惑な患者さんを紹介している感覚になってしまうのです。
しかし、その患者さんが、はじめて私が顎関節症を治すことができが人だったのです。
診断すると顎の位置が相当ずれており、これでは顎関節症症状を訴えても仕方がないだろうと思われる状態でした。
残りの歯が少なかったので残った歯を根の治療をして蓋をし、その上に総入れ歯を作ればかなりずれた噛み合わせでも治すことができそうだったので総入れ歯を作ることにしました。
その入れ歯は今も私が作成しているモノライン(0度臼歯)の入れ歯です。モノラインの入れ歯はかみ合わせの位置を自由に動かすことができるので顎の位置の決まりにくい顎関節症の患者さんやズレのひどい患者さんにはうってつけなのです。
モノラインの入れ歯を完成させると案の定患者さんはかめる様になっただけでなく、とても体調が良くなったといって喜んでくれ、予備の入れ歯が欲しいといってくださいました。
多くの入れ歯の患者さんは(当医院ではそうですが)なぜか予備の入れ歯を欲しがります。なくしたり割れたりといったトラブルがあったときに予備の入れ歯が無いと困るからだと思います。
そのとき、患者さんは本当に感謝してくたので、それがきっかけで顎関節症の治療はとても大切で患者さんにとって死活問題なんだと思うようになったのです。
そして20年以上経った今でも、あのときの出会いがなければ「今のように顎関節症の治療から、全身の変調までの治療をするといった考えは思いつくことはなかっただろうな」、と思うのです。
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