噛み合わせを治すことで思っていもいない効果も? その理論と方法

  噛み合わせを治すことで思っていもいない効果も? その理論と方法

矯正治療とはSYMPTOM

噛み合わせを治すことで思っていもいない効果も?
その理論と方法

噛み合わせを治す、考え方とその効果

SYMPTOM01

噛み合わせで体まで変わる、
噛み合わせを治す矯正の理論とは

実は今まで矯正治療は、生理的な正しい下顎の位置を理解し、それを噛み合わせのゴールとして行われてきたわけではありませんでした。
実際一部の先生で噛み合わせの位置について考察してはいたものの、実際に歯全体が移動してしまう矯正治療では噛み合わせの位置(顎の3次元的位置としてで、単なる上と下の歯の位置関係ではない)をコントロールする方法がとても難しくそれを行える確固たる技術を持っている歯科医があまりいらっしゃらないのです。

私は矯正治療で顎関節症になってしまう患者さんがどうしているのだろうと悩んでいたとき、通常の矯正治療(現在ほとんどの矯正治療はこのようにして行われています)は「上の歯列と下の歯列をそれぞれアーチワイヤーにあわせ理想的に並べ」、「理想的に並んだ上下の歯列が噛みあう位置に下顎が移動することで治療が終了する」という事実に気がついたのです。

矯正治療を受けた人なら分かると思いますが、「矯正治療中どこで噛むのか?」といったことを指導されることはほとんどなく、矯正治療中にどこで噛んでよいのかわからなくなることもしばしばです。
そして、矯正治療を受けながらいつの間に噛み合う位置が決まってゆくという感覚です。

しかし、噛み合わせを決定するということは、本来矯正治療でもっとも重要でありかつ歯科医が確実に行わなければならない作業です。
顎関節は体の中でも特殊な関節で、下顎の自由度は高く、歯の噛み合う位置に合わせどんな位置でも移動できる構造になっており、
下顎は生理的に無理 な位置でも自由に移動し、噛み合うことができるのです。
しかし、顎の位置が適切でなければ顎の周りについている筋肉には噛むたびに非常に大きなストレスがかかります。

こう考えると、たとえ歯の並びがきれいで、上下の歯列がきれいに噛み合っていたとしても、下顎が生理的に無理な位置であれば顎関節症
(顎周囲の筋肉のアンバランスによる不調)が引き起こされ顎関節症が発症しても何の不思議も無いのです。

噛み合わせを治す矯正、3つの方法とは?

TREATMENT01

上顎の位置を決め移動させる

上顎に対して生理的な下顎の3次元的位置を決め、そこで噛みあうように歯を移動させてゆきます。
(下顎の位置重視の治療、詳しい治療方法につきましては治療計画の際、説明いたします)

TREATMENT02

歯の治療による下顎の移動

虫歯や根の治療、かみ合わせの治療で歯の疾患を取り除くことによって歯が原因で引き起こされている顎や全身の筋肉の緊張を取り除き、下顎が生理的な位置に移動しやすくします。

TREATMENT03

体の負担を減らし正常な位置へ

矯正治療中はデーモンブラケット(弱い力)、正確なブラケットの位置決め(歯の均等な接触)、ユーティリティーワイヤー(適切な歯の移動)をうまく使いこなすことで、顎や全身の筋肉への負担を減らし、下顎を生理学的な位置に導きます。

私は「どうして矯正治療をしたあとで、顎関節症(体調不良)になる人がいるのだろう?」と何年も悩んだ末、「下顎の生理的な位置から大幅にずれたから」という結論と「下顎が収まる位置に歯を移動する治療」をすべきという発想が得られたのです。

下顎の位置が生理的な位置におさまると、顎周囲や首周りの筋肉の緊張がとれ、頭蓋骨や首、場合によっては、体全体のひずみがなくなり、歯を治療しただけとは思えないような効果が得られることがあるのです。頚椎の配列のひずみが除かれると、頚椎の中の脊椎管の圧迫が取り除かれ、脳脊髄液の流れが正常になったり不適切な神経束の圧迫が無くなることで体調がよくなると考えられます。
(下のイラスト参考)

頭骸骨のひずみが取り除かれると脳内の循環が良くなり、中枢神経の機能が活発になります。人によっては頭の回転や、決断が早くなったり、積極的な性格になったりします。右の写真は奥歯を挙げる前と後のCT写真です。
(右が頸椎の並びが良くなっています)

右の写真は顎の位置を動かした例です。
(頸椎と顎の位置が改善したCT写真です)

このような変化がおこる歯の移動テクニックを完成させるまで、
15年以上の試行錯誤が必要でした。

ほとんどの日本人はかみ合わせが生理的な高さより低い傾向があります。
低い噛み合わせは顎だけでなく首や後頭部の筋肉まで緊張させます。
噛み合わせを高くする矯正治療が必要ですが、その方法は今まで一般的でなかったうえ、難しく、行われることがほとんどありませんでした。

特に、抜歯矯正ではかみ合わせはより低く、下顎が後ろに入る傾向があります。歯列のアーチも狭くなり、口の中が狭くなって、呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群など)を引き起こしたり、顎周囲の筋肉が緊張して頚椎の配列が変化して、顎関節症(体調不良)を発症しやすいのです。

また、顎が生理的な位置でないことに気がつかないまま矯正治療を終了してしまうと、バランスが悪いことで、顎やその周囲の筋肉が緊張し、顎関節症(体調不良)を発症してしまうことがあるのです

矯正治療を受けて顎関節症(体調不良)になるのは、こんなメカニズムがあったからです。噛み合せを高くすることを含めた生理的な下顎の位置で噛み合わせをつくる矯正治療こそが顎関節症(体調不良)を起こさないために必要なのです。

出っ歯の患者さんの
当医院での治療法は?

当医院では出っ歯の患者さんを治療を行う際、次の3つの点に細心の注意を払って治療を行っております。
当医院で説明用に作成したイラストもご参考にされながら治療法の理解を深めてください。

出っ歯の患者さんを治療する際の注意点

1

顎を前に移動させることによって、呼吸路を確保する。

2

臼歯(奥歯)のかみ合わせを高くすることによって咀嚼筋(噛むために使う筋肉)のみならず口腔に関係する
全ての筋肉の機能が正常になるような噛み合せを作る

3

臼歯(奥歯)のかみ合わせを高くすることによって、顎関節症によって潰れてしまった関節軟骨が戻る
スペースを確保し、顎運動(顎の運動)がスムーズになるように生理学的なかみ合わせの位置へ誘導してゆく。

下のイラストは当医院で出っ歯の患者さんを治療する際の噛み合わせの変化を示したものです。

出っ歯の患者さんの場合、単に見た目で前歯が出ているだけでなく、さまざまな問題が起きています。

全体のバランスを考えた治療で、さまざまな問題が解決します。

デーモンブラケット

当医院では基本的にデーモンブラケットのみ扱っております。
このブラケットは、今までのブラケットと比較して次のような特徴があります。

1
矯正の際痛みが少ない
2
歯が動くスピードが他のブラケットより速い
(仕上がりが早いというわけではない)
3
今まで不可能と思われていた歯の動きを可能にした
(特に側方の拡大)
4
歯にあまり強い力がかからないため歯根吸収などを引き起こし
にくい

また使用するにあたり以下の注意が必要です。

1
今までの矯正装置とは違って、基本的に余り強大な力をかけて
しまうとブラケットが外れてしまう。
2
歯が痛くないので矯正中に食事がとりやすく、
力がかけやすいので歯ごたえのあるものなどを噛んで、
ブラケットが外れることがある。
3
ワイヤーの力が歯列全体のブラケットにかかるために、
予想しないブラケットが外れることがある。
4
ブラケットポジショニングをどの位置につければよいのか
わかりにくく、位置が悪いと顎が簡単に移動してしまい、
噛み合わせが合わなくなる。

最近では多くのメーカーがセルフライゲーションブラケットと言って、デーモンの同じようなワイヤーで縛らないタイプのブラケットを販売するようになってきました。

セルフライゲーションのブラケットは強い力がかけられないので、歯が移動してくるまで矯正治療を時間をかけて行わなければなりません。決して歯が移動しないというわけではないのですが、歯の位置が異常になってしまうの体にもさまざまなの原因があるのです。

そして、特に顎骨には歯が異常な位置に生えてしまう様な応力が残っています。他社でもいろいろ出していますが、デーモンブラケットは全く違います。
同じセルフライゲーションブラケットでも、デーモンブラケットはワイアーとブラケットに摩擦がないために、矯正の考え方自自体が全く変わってしまうのです。私はこのブラケットのおかげで、ほとんどの症例を非抜歯で行うことがでいるようになったうえ、鼻づまりの改善や、睡眠時無呼吸症候群の治療など、歯科では今まで治療の対象でなかったことが治療が可能になりました。
(もちろん今までのブラケットで無理だったというわけではありません)。

歯槽骨自体を広げることができるため、骨格がどう考えても歯が並ばないと考えられた症例も、抜歯なしで治療をすることが可能になりました。しかし、非抜歯で治療を行うということは、患者さまが求める審美性である口元の飛び出しをなくすという点においてはやや不利です。歯を抜かない分突出感を劇的に変化させることは難しくなります。しかし口の中の広さを確保するのは非常に適しています。ですから絶対に非抜歯でできるというわけではありません。また従来の診断方法では抜歯が不可欠な症例があることも事実です。

デーモンブラケットは、
なぜ矯正治療に適しているか?

・ブラケットを締め付けないので、歯が自由に移動できるため、骨を一緒に移動させることができる。
・弱い力でも十分動くので、痛みが少なくなった
・強く締め付けないために、かみ合わせに無理があれば、強く当たっている歯は勝手に動いてくる。
(正しいかみ合わせの位置がどこであるのか、治療中にわかってくる)
などの理由が挙げられます。
またデーモンブラケットは、どんなに歯が込み合っている状況でも、ほとんど前歯を突出させることなく歯列事態を拡大して治療を行うことができるのです。これは歯列全体を後ろに送ったり、歯列自体を横に拡大したりする力が優れているためです。
しかし、デーモンブラケットを使ったからと言って一律に簡単に治療がうまくいくわけではありません。
それを理解していれば、安易に抜歯を行う必要はなくなるでしょう。

ところで、今はやりのマウスピース矯正や内側の矯正は理想的な噛み合わせを作ることができるテクニックではありません。また治療中に見た目が良いことを希望するのは、相反することであることを御理解下さい。そのような理由から当院では内側の矯正、マウスピース矯正は一切行っておりません。

このような治療を求めるのは、機能を犠牲にして見た目の良い包帯や、ギブスなどを求めているのと同じで、あまり良いことではないと気づくべきでしょう。近年、歯が原因で、睡眠時無呼吸症候群が誘発されたり、ひどい場合はうつ症状、自律神経失調症などになることがわかってきました。これらの多くの原因が歯にあることがわかってきました。デーモンブラケットは写真のように、歯のアーチを拡大し、これらの症状を実際にとってゆくことが報告されています。(実際当医院でも経過は良好です)
今までの矯正とは違ったアプローチを可能にした素晴らしいブラケットなのです。

デーモンブラケットについて注意点を挙げると

デーモンブラケットは素晴らしい機能を持っています。しかしだからと言って、治療が必ず早く終わるかというとそういうわけではないと思います。一言でいえばより体の良い影響の出るかみ合わせをつくる矯正治療が可能になったということです。この点に関して、デーモンブラケットを積極的に宣伝するオームコ社とデーモン先生の講習はあたかもそれが可能のように伝えていること自体、かなり問題といえます。

デーモン先生はいかにも治療が早期に終わり、調整の回数が少なくなるような誤解を与えかねない講習会を行っており、これが様々な問題を引き起こしています
(実際治療がうまくいかず、悩んでいらっしゃる先生も多いと思います。
当医院を訪れた患者さまの中にもデーモンでの失敗症例がかなりあることは事実です。必要なのはきちんとした知識でしょう)。
先生も患者さまも困っている方は多いと思います。デーモンブラケットで注意すべき点をいくつかあげましょう

❶仕上がったように見えても実際は、治療半ばである。

大部分のデーモンを売りにしている先生が、スピードの速さをうたっているが、一見仕上がった様に見える状況で終了にしている・・実際は治療は完了していない・・。
これはデーモン先生の講習会で早さを売りにしていることも問題であるが、実際はデーモンブラケットの良さは、この後の仕上げに持ってゆく治療過程にあるのです。 1年で終わることはまずあり得ないと思った方がよいでしょう。

❷適切な場所にスペースが現れる。

治療途中に適切なスペースができることがデーモンブラケットの最大の特徴であり、これをきちんと利用すべきである。またスペースができてきたら、問題はないか考える必要がある。

❸ポジショニングが非常に難しい

ブラケットの形態および構造上、歯のどの位置にブラケットつけるかが非常に難しい。下顎の小臼歯、大臼歯を浅めにつけてしまう傾向があり、小臼歯部が噛まない不安定なかみ合わせになってしまうことがある。また人によってはブラケットが取れやすいので、大臼歯部を深くつけすぎてしまい、舌側に歯が傾いてきたりする。

このようなデーモンブラケットの特徴を知らずして、ブラケットの良さに飛びついた先生が、失敗症例の山を積み上げ、悩んでいるのではないかと私は考えます。 実際私自身もデーモンブラケットの真髄を理解するのに非常に長い年月を試行錯誤を繰り返した事実があります。デーモンブラケットは治療に対してより良い効果をあげることが出来る素晴らしい ブラケットですが、使い方を理解しなければその真価を発揮することはできないでしょう。