噛み合わせを治す、考え方とその効果
噛み合わせでからだまで変わる、噛み合わせを治す矯正の理論とは?
今まで、矯正治療は、生理的な下顎の位置を考えて行われてきたわけではありませんでした。
実際一部の先生で噛み合わせの位置について考察してはいたものの、実際に歯全体が移動してしまう矯正治療では噛み合わせの位置をコントロールする方法論そのものがなかったといえます。
従来の矯正治療(現在ほとんどの矯正治療はこのようにして行われています)は「上の歯列と下の歯列をアーチワイヤーにあわせ理想的に並べ」、「理想的に並んだ上下の歯列が噛みあう位置に下顎が移動することで治療が終了する」ということに私は気がついたのです。
矯正治療を受けた人なら分かると思いますが、「矯正治療中どこで噛むのか?」といったことを指導されることはほとんどなく、矯正治療中にどこで噛んでよいのかわからなくなることはしばしばで、自然にかみ合う位置ができていくという感覚です。つまりほとんどの矯正治療は歯のかみ合う位置が顎の位置を決めてしまうのです。
顎関節は体の中でも特殊な関節で、下顎の自由度は高く、歯のかみ合う位置に合わせどんな位置でも移動できる構造になっており、下顎は生理的に無理な位置でも自由に移動し、噛みあうことができるのです。しかし、顎の位置が適切でなければ顎の周りについている筋肉には噛むたびに非常に大きなストレスがかかります。
たとえ歯の並びがきれいで、上下の歯列がきれいにかみ合っていても、下顎が生理的に無理な位置であれば顎関節症(顎周囲の筋肉のアンバランスによる不調)が引き起こされる可能性が高いのです。
当院だけの噛み合わせを治す矯正、3つの治療法
1、上顎に対して生理的な下顎の3次元的位置を決め、そこで噛みあうように歯を移動させてゆきます。(下顎の位置重視の治療)
2、虫歯や根の治療、かみ合わせの治療で顎や全身の筋肉の緊張を取り除き、下顎が生理的位置に移動しやすい環境をつくります。
3、デーモンブラケット(弱い力)、正確なブラケットの位置決め(歯の均等な接触)、ユーティリティーワイヤー(適切な歯の移動)で、顎や全身の筋肉の負担を減らします。
私は「どうして矯正治療をしたあとで、顎関節症(体調不良)になる人がいるのだろう?」と何年も悩んだすえ、「下顎の生理的な位置から大幅にずれたから」という結論と「下顎が収まる位置に歯を移動する治療」をすべきという発想がえられたのです。
下顎の位置が生理的な位置におさまると、顎周囲や首周りの筋肉の緊張がとれ、頭蓋骨や首、場合によっては、からだ全体のひずみがなくなり、歯を治療しただけとは思えないような効果が得られることがあるのです。
頚椎の配列のひずみが除かれると、頚椎の中の脊椎管の圧迫が取り除かれ、脳脊髄液の流れが正常になったり不適切な神経束の圧迫が無くなることで体調がよくなると考えられます。
下のイラスト参考
頭骸骨のひずみが取り除かれると脳内の循環が良くなり、中枢神経の機能が活発になります。
人によっては頭の回転や、決断が早くなったり、積極的な性格になったりします。
下の写真は奥歯を挙げる前と後のCT写真です。(右が頸椎の並びが良くなっています)
下の写真は顎の位置を動かした例です。(頸椎と顎の位置が改善したCT写真です)
このような変化がおこる歯の移動テクニックを完成させるまで、15年以上の試行錯誤が必要でした。
ほとんどの日本人はかみ合わせが生理的な高さより低い傾向があります。低い噛み合わせは顎だけでなく首や後頭部の筋肉まで緊張させます。
噛み合わせを高くする矯正治療が必要ですが、その方法は今まで一般的でなかったうえ、難しく、行われることがほとんどありませんでした。
特に、抜歯矯正ではかみ合わせはより低く、下顎が後ろに入る、傾向があります。歯列のアーチも狭くなり、口の中が狭くなって、呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群など)を引き起こしたり、顎周囲の筋肉が緊張して頚椎の配列が変化して、顎関節症(体調不良)を発症しやすいのです。
また、顎が生理的な位置でないことに気がつかないままで矯正治療を終了してしまうと、バランスが悪いことで、顎やその周囲の筋肉が緊張し、顎関節症(体調不良)を発症してしまうことがあるのです。
矯正治療を受けて顎関節症(体調不良)になるのは、こんなメカニズムがあったからです。噛み合せを高くすることを含めた生理的な下顎の位置で噛み合わせをつくる矯正治療こそが顎関節症(体調不良)を起こさないために必要なのです。