顎関節症になる原因は以下のものがあります。
- 顎をぶつけたり、何かにぶつかったりしたことによるもの
- 高いかぶせ物や、低いかぶせ物などを入れられたことによって、咬み合わせが変わってしまったことが原因で起きる場合
- 歯並びが悪かったり、もともとも咬み合わせが悪かったことが原因で起きる場合
顎関節症の原因となる理由
1.顎は特殊な構造になっており(二つの関節が比較的自由度が高く動く構造になっている)これが強い刺激(口をあいているときに何かがぶつかってきたり、抜歯のときなどに強い力を上からかけられたりする)を受けた場合、顎関節の関節円盤に変形が起こり、それによって顎が正常に動かすことができなくなってしまいます。
2.高い被せ物や、低い被せものを仮に入れられても、ほとんどの人はずっと高いと感じることはありません。1日から1週間程度で高さに慣れ、何も感じなくなります。
しかし、これは慣れたのではなく、顎の筋肉にある筋紡錘というセンサーが働き脳に“高いぞ”という感覚を伝え、それを受けて脳がかみ合わせの位置を調整するよう筋肉に命令を出しているのです。咀嚼筋(かむ際に使用する4つの筋肉・・咬筋、側頭筋、内側翼突筋、外側翼突筋)の中で、咬み合わせの位置を調整するために特定の筋束が収縮してしまうので、筋肉の中で不適切な緊張が起きる部分ができてしまいます。
このように緊張した筋肉は常に過剰なストレス状態を強いられることになります。これが日常生活の無意識の咬みしめを生んでしまいます。咬みしめや緊張を繰り返すうちに、咬み合わせを調整するために緊張していた筋肉の一部だけでなく、咀嚼筋すべてが緊張するようになってしまいます。
これが続くと、筋肉は常に疲労した状態となり、少し硬いものを食べたり、しゃべり続けたり、歌ったりするだけで、顎の筋肉がこむら返しを起こしたような状態になるのです。“朝起きてみると、口が開かない”というのは患者さんからよく聞く話です。これは、夜の間中咬みしめをしているので、寝ている間ずっと、口の筋肉を緊張状態にしているからです。このような人はどんなに寝ても朝疲れが取れていませんから、日常生活の効率は著しく悪くなるのです。
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この患者さんは、上の奥歯がわずか数十ミクロン低かっただけで、ひどい顎関節症になってしまった患者さんです。口の中を見ても、また通常の(100ミクロン程度の厚み)の咬合紙を使っても低いかどうかはわかりにくいものです。正確に高さを調べるには通常のものよりも薄い8ミクロン程度の厚みの咬合紙が必要となります。 |
3.歯並びが悪かったり、咬み合わせが悪かったりする場合は2と同じ理由で、顎関
節症になる場合があります。ただしこの場合は人工的に咬み合わせを狂わされたのとは少し様相が変わり、次の三つの場合が顎関節症の原因となります。
一つ目は、ただ単純に咬み合わせの位置がずれている場合(上の歯と下の歯で咬み合う位置と顎の関節がしっかりおさまる位置がずれている場合)で、このケースが最も多くの顎関節症の患者さんで見られます。咬み合わせがずれているので、顎の位置を自分で調整して、咬めるようにしているのです。
一つ目の例
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これだけ咬み合わせがヅレていると、顎の筋肉のみならず、首、肩、そして背骨全体にまで影響が及び、当然体調も悪くなります。(顎にとって正しい咬み合わせでは矢印部分しか咬み合わない) |
| 普段の咬み合わせの位置 |
顎の関節が正しく収まった
位置の咬み合わせの位置 |
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二つ目は、咀嚼するために顎を動かすときの歯の当たりかたが悪い場合です。食事をする際、顎はまっすぐ下にあけられているのではなく歯を横にずらしつつ咀嚼しています。正しい咬み合わせの人では、横に動かすときに犬歯だけがあたるようになっています。しかし犬歯以外の歯や、咀嚼していない側の歯が咀嚼中に当たると、顎二腹筋(顎の下あたりにある筋肉)などに緊張を引き起こすことが知られています。このような咬み合わせが原因で顎関節症になる患者さんの代表に叢生(歯並びがガタガタ)があります。
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歯並びに叢生があると、正常な咀嚼運動ができませんから、食事も実は十分に咬めていないことになります。(矢印部分で咬み合わせが引っかかっている) |
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三つ目は、犬歯が当たる角度(横に顎を動かすときの歯のあたる角度)がきつすぎて顎の筋肉に過剰な緊張が現れてしまう場合です。過蓋咬合(下の歯が見えなくなるぐらい上の歯がかぶってくる状態)の患者さんがこのような問題を持っていることが多いです。「口が開きにくい」、「開けようとすると顎の関節が引っかかる」、「首や肩が異常なほど凝る」などを訴えることがあります。
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過蓋咬合の例です。歯並びが一見余り問題がないように見えますが、激しい顎関節症の症状に悩まされていた患者さんです。(矢印部分の犬歯の角度に注目) |
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顎関節症は自分の体の状態に対して敏感な人がかかりやすい傾向にあります。しかし、不調を感じないからといっても、咬み合わせに問題があれば、正常というわけではありません。自分の状態を認識していないだけであって、決して健康な状態というわけではありません。肩こりを知らなかった人に肩をマッサージしてやると自分にも肩こりがあると気づくようになります。体の不調に対して無頓着であるために、わからないのですから、決して良いことではありません。(当院で治療をすると自分も顎関節症であったことに気づく人がたくさんいらっしゃいます。)体調不良をすぐ訴えている人が意外に長生きで、いつも元気にしていた人が急に「コロッ」と死んでしまうことは自分たちの周りでもよくあることです。常に自分の体の声を聞くことができる人が長生きできるのです。
顎関節症の原因は、咬み合わせでは上記のようにさまざまですが、もっとも症状をひどくしてしまう原因は実は現代人のストレスにあるのです。
人間は社会的動物である以上、さまざまなストレスにさらされています。そのストレスを発散するひとつの方法として、歯軋りがあるといわれています(実際研究でも証明されています)。したがって現代人のように高いストレスに常にさらされている場合、歯軋りはいっそうひどくなり、歯にひびが入ったり、それが元で虫歯になりやすくなったり、咬み合わせの力で歯周炎になりやすくなったりと、さまざまな問題が生じているのです。
咬み合わせが悪いという条件はさらにひどい咬みしめを促し、また歯軋りの力は、普段自分でおもいきりかみ締めるときに出る力よりもはるかに大きいことが知られています。
虫歯は克服されても、文明病としての顎関節症と、顎関節症がもたらす虫歯などは正しい咬み合わせの治療と正しく作られたナイトガードが普及するまでは減ることはないでしょう。 |